メイン

□見える顔
1ページ/1ページ

R15     



朝、名無しさんはぼんやりと目覚めた。普段感じたことがない温かさに目がやわらかくさめたのだ。
しかし見慣れた自分の手や布団がぼやけて見えるはずが今回は真っ黒だった、ぼやけているのかと瞬きはしたが変わらない黒一色。

「…?」

とにかく手を伸ばすとそれは触れた、布だ。
視線を少し上げていくと肌色があり鎖骨が見えた。

「(え、鎖骨?)」

何故そんなものが見えるのか、もう少し上を見上げるともう見慣れた、見たことない顔をした男がいた。

「あ、そうか…泊まったんだっけ」

覚醒しきれない頭で昨日名無しさんの家に泊まった彼のことを思い出した。そうかそうかと納得し、起きてもらうようにうながす。

「おーい、起きて―動けないよー」
「…ん」
「朝ごはん作るから起きて―」
「んん…」

顔をぺちぺち叩いたり目の前の胸をバシバシ叩いたりするが彼、暁が起きる様子は見受けられない。

「もしかして、寝起き悪い?意外かも…」

暁は常に紳士であった。出かけるときも電話の時もスマートに行動しレディファーストを忘れない人間であった。少なくとも、名無しさんはそう思っていた。

「暁ー…」
「んんー…んぁ」

やっと瞼を開けて名無しさんを視界にいれた。

「おはよう、そろそろおきてほ」
「名無しさんだ…名無しさんがいる…」
「え、ちょっなに…」

ぼんやりとした顔で名無しさんと名前をつぶやきながら顔を近づけて彼女にキスをおくった。

「んぐっ?!んむー!」
「ん…ちゅう」
「むー!」

離れようと肩と胸に手を当てて押し返すが暁は離れるのを嫌がるように名無しさんの頭と腰に手を回しがっちりと固定してきたのである。
キスをしたことがないわけではない、だがいつもは優しく壊れ物を扱うようにしているのだ。名無しさん自身それに不満はないがもう少し強めに来てもいいのではと感じている。
しかし、今回は今までのものとは違う逃げ場を失わせ相手を無視した強引なものであった。
彼女の記憶する彼とはかけ離れた行動に混乱して顔が赤くなっていく。

「っふぅ…ぁ」
「んむ…はっぁ、もっと…」
「え、ん」

一度離れて再び口を塞ぐ、今度は舌を入れて名無しさんの口内を味わう。
先ほどより深く強引に暴かれ名無しさんは快感による生理的な涙と酸素不足で脳が麻痺し、抵抗する力がなくなってきた。
それをいいことに暁はどんどん彼女を味わう。

「ん、ちゅ…ふ」
「はぁ…んむ……ん?」
「ふあ?」

体を撫でられて服の中に手が忍び込もうとしていた時、暁の目がパチリと覚醒し、顔を離した。またしても急な行動に名無しさんは追い付けずに彼を見つめた。

「え…っあれ?俺、何を…」
「あ、きら?」
「いや、えっと…これは…ごめん!」

自分の行った行動に暁は顔を赤くし急いで布団から飛び出した。そこで彼女も意識を取り戻し彼を止めようとしたが、それより早く飛び出してしまった。

「っいだ!!」
「ちょっと暁!?」
「だ、だいじょうぶ…へいき、平気だから…」

おぼつかない足で駆け出したせいか壁の角に足を強くぶつけて片足を上げてぴょんぴょんと飛び跳ねた。
彼女の質問に苦しそうに答えた。そしてそのままトイレへと消えたのだった。

「……」

嵐のような出来事に名無しさんはそこでぼうっとしているほかなく、恥ずかしいやら嬉しいやらであった。しかし彼の知らないことを見れたという気持ちがもこもこと膨らみ口がどんどんにやけていった。

「ねぇ!暁!」

トイレに駆け込んで出てこない彼に彼女は明るい声で話しかけるのであった。





見える顔









添い寝CDから元ネタ拝借。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ