Kitten
□芽吹く
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オルスバンいやって言ってるのに!!
「ちぇな〜、いい子だから出て来て〜?」
昨日はいたくてびっくりして、すっごくすっごくいやだったんだから!
ぼく、たくさんたくさん怒ったのに、ふーーーっって怒って見せたのに、しんぐぅもちょんでもみんひょも笑ってて。撫でてくれたけど、ぼくがすっこぐ怒ってるのに笑ってて。ぼくほんとにびっくりして怒ってたのに、いつの間にか寝ちゃってた。
今日は朝からずっとあそんでくれるし、だいすきなおやつもたくさんくれたから忘れてたけど、ぐぅぐが急にオシゴト行くって。だからケージに入れようとするから、思い出したんだ。
ぼく、すっごく怒ってたんだって思い出したんだから。
「留守番してますよ、ぼく」
ちょんでが来たのはぼくが棚の奥っこに逃げ込んで、ぐぅぐとでにらめっこしてるとき。
知ってるんだ、ここならぐぅぐの手が届かないこと。
「それは助かるけど、でも……」
さいきんぼくはオルスバンになるとケージに閉じ込められてしまう。
いろんなものがたくさんたくさん積み上げられているモノオキの扉が壊れてて、ぼくが入ったらあぶないからだって。いろんなものがたくさんあって、スキマもたくさんあってすごく楽しいのに、入っちゃダメってすぐに連れ出されちゃう。
「今日は時間ありますし、チェンくんの顔も見たいし。ほら、昨日ははじめての注射で怒らせちゃったから」
「…助かるよ。なるべくはやく戻るから」
パタパタとぐぅぐの足音がして、お外のドアが閉まる音がしたと思ったら、ぐぅぐの声もちょんでの声も聞こえない。さっきまでお話してたのに。
ぼくはなんだかさみしくなってきて奥っこから出てみる。
「あ、出てきた」
いつもしんぐぅが座ってるソファに座ってるちょんで。キョロキョロ見渡してみたけど、しんぐぅがいない。
「イーシンさんを探してるの?もう出かけちゃったよ?」
ちょんでがぼくを抱き上げて、指先であごをくすぐってそう言う。
オデカケのときはぼくをゲージに入れていくのに、何も言わずにオデカケだなんて。
もしかしてぼくが怒ったから怒ったの?もう帰って来ないの?
探しに行かなきゃ。
「え?チェンくん??…あっ」
ぼくはちょんでの腕を蹴って飛び降りると、お外へのとびらに向かって駆け出した。
でも、お外へのとびらは爪を立てても、鳴いて呼んでも開かなかった。
「さびしくなっちゃった?」
いつのまにかすぐ後ろにいたちょんでがぼくのあたまを撫でてくれる。
「…みぁぁん……」
「大丈夫だよ、イーシンさんすぐ帰ってくるからね。それまでぼくと遊んで待ってよ?ん?」
抱き上げられたちょんでの胸はいい匂いがして。
しんぐぅとはちがうけど、どこか似ている気がして、ぼくはグリグリとあたまを押し付けた。