Kitten
□レイヨン
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『ヨリは先に行ってて。ヌナを待たせるわけにも行かないし』
『いいけど、どーすんの?これじゃどこのちびか、まったくわかんないじゃん』
どっちから来た?どんなおうち?
涙は止まったけど、なにを聞かれても答えられない。
『ほっとくわけにもいかないでしょう?ここじゃクルマもだけど、カラスにもつつかれかねないもの』
『わかった。じゃあ先に行ってるね』
来たときとおなじように、大きなネコさんがどこかに行ってしまった。このネコさんも行っちゃうの?
『ん?そんな顔してどしたの?…大丈夫だよ、おうち探してあげるから、ね』
じっと見てたぼくに、にっこり笑ってスリスリしてくれる。あったかくて、ぼくはしんぐぅにするみたいにフトコロにアタマをぐりぐり擦り付けた。
『あは、ぼくにマーキングしてるの。かわいいなぁ』
笑いながら耳のあたりをサリサリと舐められた。
まーきんぐ?なにそれ。わかんないけど、ぐりぐりするとぼくの匂いが混ざってすごく落ち着くんだ。
『さて。どーしようかな…まずは名まえ言える?』
『チェン…ぼく、チェナっていうの……』
『チェンか、可愛い名まえだね。ぼくはレイだよ。下の子はみんなレイヒョンって呼ぶんだ』
ぼくをフトコロに抱え込むようにしたまま話すレイヨン。
『レ、レイヨン?』
『……ふふっ、そうだよ。レイヒョンだよ、チェナ』
涙の跡が固まっちゃったねと、ぼくの顔を舐めてくれるレイヨン。くすぐったくて身体を捩るけど、レイヨンに押さえられて動けない。
『おっけ、きれいになった。…チェナはそとの子じゃなさそうだけど、どこかのうちで生まれたってのも聞かないんだけど……。まだおっぱいかな?』
ブツブツとつぶやくレイヨン。
おっぱい…?
『ちがうよっ!チェナおっぱいじゃないよ、もう赤ちゃんじゃないもんっ!!』
『え、そうなの?』
心底びっくりしたようなレイヨン。ミルクは大好きだけど、もう赤ちゃんじゃないんだから、オンマのおっぱいなんて飲まないのに。
『そっかぁ。ちっちゃいからまだおっぱいいるかと思ったけど、そう言えばこないだ生まれたヌナのとこの子たちよりずいぶん大きいもんなぁ』
なにがおかしいのか、ひとりで笑ってる。おとなのネコさんなのになんだかフワフワしてて、レイヨンってなんだか不思議。
『といってもそんな遠くから来たとも思えないし、このあたりで飼われてるならミニヒョンが知ってるかな?ヒョンのとこに連れてくべきか、でもヌナのとこにも急がなきゃだし…』
ミニヒョン?ヌナ?なにかを考えてるレイヨンからは知らないことばがたくさん。
「あれ?レイじゃん」
ブツブツと考えごとをしているレイヨンを見ていたら、後ろから声をかけられた。