tomboy
□ヨリとキョニ
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“町で一番高い塔のうえをお日様が通り過ぎたら”
ネコだってニンゲンが思うより正確に時間がわかってるんだ。野生の勘と自然の知恵ってやつ?
今日はヌナの家移りを手伝う約束をしていた。ヌナのところには可愛いチビたちがいて、ヌナだけじゃ新しい寝床まで運ぶのがたいへんだから。
「……あれ?」
途中で見かけたレイヒョンに先に行けと言われて、急いでヌナの寝床に来て見たものの、だれもいない。
「キョニも来てるはずなっっ……?!」
「おっせーよっ!デクノボウがっ!!」
あたりを見回そうとしたおれに後ろから跳び蹴りを喰らわせたのは、仲間のキョニ。
「いってぇ〜〜」
「蹴ったんだから、いてぇの当たり前だろ。ばぁーか!」
キョニは痛がるおれを見下ろして(実際は身体が小さいから見下ろされることはないけど)、フンと鼻を鳴らした。
「ぽやっとしてるレイヒョンが時間間違えたとしても、おまえまでオレを待たせるとはどういう了見だ、えぇ?!」
「ちがうよぉ〜。遅れたのには訳があるんだってぇ」
説明しようとしたら、キョニの後ろの小屋からヌナのチビたちがミーミー鳴きながら出て来た。おそらく、オレらが来るまでの安全策でキョニが隠してたんだろうな。
まずは新居にヌナとチビたちを送らなきゃ。
ヌナのチビたちが生まれたのはついこないだな気がするけど、身体の大きい子はじぶんで歩けるし、新居は思ったより近くてなんの問題もなく家移りは終わった。
「えっ?じゃあ、その迷い子をレイヒョンひとりに任せて来たって言うのか?」
「うん。レイヒョンが連れて来るんじゃないかなぁ。オレには先に行けって…いてっ!なんで殴るんだよぉ〜」
迷い子を見つけて遅れたのだとキョニに説明したら殴られた。小さいけど、ピンポイントなパンチはなにげに痛い。
「ばっかか、てめぇは!ポヤポヤしてるレイヒョンに迷い子の世話ができると思うのか?!連れて来るにしたって、チビ連れてたら途中でなんかあっても身動きとれねーじゃんかっ!」
「あ……」
「あ、じゃねーよパボヨリ。休んでないでレイヒョンのとこ行かな…」
イライラとオレに怒りをぶつけるキョニが腰を上げようとしたとき、のんきな声が屋根の上から聞こえて来た。
「相変わらず仲良しだねぇ。もう終わっちゃったの?」
「「レイヒョン!!」」