Kitten
□ちょんで
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「レイが子ネコを連れてるなんてめずらしいね。おまえの子…にしては似てないか」
声をかけてきたヒトをレイヨンは知ってるみたい。出された指先に鼻先をくっつけてごあいさつしてる。
『ちょうど良かった。チェナは運がいいね』
『え?』
レイヨンはそう言うとぼくの首をくわえて、そのヒトのそばに連れて行った。
「え?レイなに?どうしたの?」
『レ、レイヨン??』
そのヒトの手元にぼくを置くと、グイグイとあたまで押してくるレイヨン。塀の端っこまで押されて、気づいたらそのヒトに抱っこされてた。
『じょんでがミンヒョンのところに連れてってくれるから。ミンヒョンのところに行けばチェナのおうちもわかると思うんだ』
ちょんで?みんひょ?それなに?だれのこと?
「この子なんなの?どうしたんだよ、レイってば……」
『チェナは迷子なんだ。だからじょんでにミンヒョンのところに連れてって欲しいんだ』
『なに?レイヨン、ぼくわかんない。レイヨンレイヨン〜』
戸惑ってるのが抱っこされててもわかる。よくわかんないけど、レイヨンと離れてることが不安で不安で、また塀に戻してと一生懸命叫んだ。
「ちょっ、わぁ…って、おまえ怪我してる?」
『はなしてよ〜レイヨンレイヨン〜〜』
暴れた拍子に擦りむいた足がそのヒトの手に当たったみたいで、両手で押さえつけられたらもう動けない。
「レイ。この子の怪我の手当てしろってこと?それにリボンつけてるってことは…迷子かな?」
『そうなんだ』
「わかった、ヒョンのところで診てもらおう。レイは?いっしょにくる?」
『ぼくはちょっと行かなきゃいけないところがあるから…』
わけがわからないぼくをよそに、まるでコトバが通じてるみたいなふたり。
『チェナ。じょんではいいニンゲンだから心配しなくていいよ』
『ちょんで…?』
『ふふ。そう、そのヒトがじょんでだよ。用事を済ませたら戻るから、いい子に手当てしてもらうんだよ?わかった?』
ずっと撫でてくれてる指は優しくて、さっきレイヨンが泣いてるぼくの顔をキレイにしてくれたときみたいで、ぼくは不安だったけど、レイヨンにうなずいてみせた。
『いい子だねチェナは。じゃあ、あとでね』
『あっ……』
レイヨンはサッと背を向けると、塀を走って瞬く間に屋根に登って行ってしまった。
落ちかけた夕陽に毛並みがキラキラ反射してすごくキレイだった。