Guardian
□おとうと_side L
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思いのほか打ち合わせがはやく終わって、社に戻るには中途半端で、直帰の許可が下りるだろうことは想定内。上司からの返信が届いたときはすでにハンドルはミンソクのクリニックに向かっていた。
勝手口を開けようとした瞬間、なかから出てきたジョンデとぶつかりそうになって、ジョンデ抱えてる袋からぽろっとこぼれ落ちたのは子ネコ用のおやつ。おれがこの間実家に持って行ったのとおなじ試供品だ。
「どうすんだ、これ?」
「新しい患者さんが子ネコで、あげて来いってソギヒョンが。ルハニヒョン今日は早いんだね」
拾ったそれらをジョンデの懐に戻してやると眉毛を下げてフニャッと笑う。この顔は出会ったころから変わらない。
「出先ではやく終わったからな…」
「……なに?」
思わずアタマをポンポンと撫でれば、怪訝そうな目で見られた。
「いや、おっきくなったなぁと思ってさ」
「ははっなにそれ。なんか年寄りくさいよ?」
「なっ⁉」
「行ってきまーす!」
逃げろとばかりに駆けだすうしろ姿に、やっぱりおおきくなったなぁとしみじみ感じる。
でも、年寄りは言い過ぎだろ。
ミンソガと知り合って。
話せば話すほど気があって楽しくて、おなじサッカー部に入ってからは放課後もほぼ一緒。クラスが一緒でないのがほんっとーーーに残念でならない。
「え?うちに?」
「うん」
部活が急に休みになり、他のやつらはカラオケだなんだと盛り上がってたけど、おれはミンソクの家に遊びに行きたいと言ってみた。他の奴らがむかしミンソクの家に行ったことがあると言ってたから、なんとなく対抗心?
「ダメ?」
「…ま、いいけど」
答えまですこし間があったけど、そこはあえてスルー。ほんとに嫌ならちゃんと断るはずだし。そのくらいはみじかい付き合いでもわかってるつもりだし。
徒歩通学のミンソクとはいつも部活帰りに立ち食いするコンビニで別れる。手を振ったあとも名残惜しくて、ミンソガがかどを曲がるまでこっそり見てるんだけど、今日はこそこそすることもなくミンソクの横を歩いてついていく。
似たような家が立ち並ぶ住宅街で、出迎えてくれたオモニは切れ上がった目尻がミンソクに似ていて、なんだかへんに緊張してどもってしまった。
ミンソクらしいきちんと整理された部屋で、テキトーに座ってと言いつつベッドには上がるなってのもおれと似ていて、ニヤけそうになるのをがんばって引き締める。
ミンソガに白い目で見られるかおになってたと思うから。
オモニが出してくれたジュースを飲みながら一緒にサッカー雑誌を眺めていると、キィとちいさな音を立てて扉が開いた。