Guardian

□Don'tCry
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 1限終了チャイムが鳴って数秒。バタバタという足音とともに乱暴に教室のドアが開いた。

 「みんそがっっ!!」

 違うクラスのあいつが駆け込んで来ても、もうだれひとり気にしなくなった。

 「……」

 返事をせずにギョンスに借りたノートを書き写し続けていると、ズカズカとオレの席まで入ってくるルハン。なんの遠慮もない、よそのクラスのくせに慣れたもんだな。

 「ねぇ、ミンソガってばっ!」
 「うっせー。これ午後には返さなきゃなんだから、いま時間ない」
 「うう〜〜」

 顔を上げなくてもわかる。怒ってるみたいな泣きたいみたいな顔してるんだ。しかも、オレがその顔に弱いってわかってるからタチが悪い。でもほんとに時間ないんだから。

 「これ写さないと昼めし一緒に食べられないけど、それでいいのか?」
 「うっ?!わかったよ……」

 すごすごと帰っていくあいつの気配を感じながら、間違えないように必死に書き写す。几帳面なギョンスのノートはわかりやすくて、本当は考えながらゆっくり写したいけど、それじゃ昼休みに学食に行けなくなるから仕方ない。


 あの日。

 ハルモニの家で子ネコをあやしながら話してみると、ルハンは派手なうわさとは違ってすごく話しやすいやつだった。
 オレがおなじ学校でサッカー部だと知るとじぶんもサッカーをしていたと話が盛り上がり、サッカー以外の共通点も多くて話が途切れることはなかった。ハルモニに遅くなるからそろそろ帰れと言われるまで、時間が経つのを忘れて喋っていた。

 翌日、サッカー部に入部するとオレの教室を訪ねてきたのを皮切りに、ルハンほぼ全部の休み時間をオレのクラスで過ごしている。
 移動教室とか時間がなくても、廊下から声を掛けてくるから、「なんで知り合いなのか?」「どうやって仲良くなったのか?」とクラスメートや知らない女子たちからも質問責めにされたっけ。
 サッカー部の朝練に始まり、休み時間、昼めしの学食から放課後の部活に帰り道まで。ほぼいっしょにいる。
 オレがいるからルハンに声が掛けにくいと言われたりもして、そう言った女子にルハンが直接文句言ったりして、いまでも遠巻きからジトッとした視線を感じるけど。

 オレたちはいつの間にかニコイチのように扱われるようになった。


 
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