Guardian
□XmasDay
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小さいころから動物はニガテだった。
ハルモニのうちの、オモニがちいさいころに拾ってきたという老ネコはあまり動かないし、おれたちが騒いでいるとたしなめるかのようにチラリと視線を投げてからそっぽを向く。
おまえが赤ちゃんのころは子守りみたいに添い寝してくれたのよ。
オモニはそう言うけど赤ん坊のころの記憶なんてあるわけないし、父さんの仕事で10年くらい遠くに引っ越してて、また近所に帰ってきたときはもう動物がニガテだった。
しかもハルモニのうちには飼いネコだけじゃなくエサをもらいに来る半ノラも結構いて、やっぱりことばは通じないし、撫でてやろうと手を出しても威嚇してきたりするし。
年の離れた弟のジョンデが手を出して引っ掛かれないように、遠巻きに見るだけだった。
ジョンデは良くも悪くも物怖じしないから。引っ掛かれて泣かされても懲りずに近づこうとするんだ。ジョンデがむずがらない程度に離れて、後ろから抱っこしてハルモニがネコたちにエサをやるのを見ていた。
「ヒョン、クリスマスなのにまだ終わらないの?」
「今朝の急患のカルテだけ仕上げたらあがるよ。約束あるんだろ?おまえは行っていいぞ」
そんなオレが、獣医になっている。
小さかったジョンデは大学生になり、空き時間を見つけては手伝ってくれる。人手不足のクリニックには頼もしい戦力だ。
「じゃあ行くね、メリークリスマス!」
「おぅ、あんまり飲みすぎるなよ。ベクたちによろしくな」
「はぁい。行ってきます!」
クリスマスプレゼントではないけれど、買ってやったデイバッグを背負って駆け出して行くジョンデ。
仕事漬けの兄を思って気遣い屋の弟は、仲間内の集まりに誘ってくれたが、丁重にお断りしておいた。ジョンデの仲間は気のいいやつらだが、正直うるさい。
ケージを開け、今朝運び込まれてきた小型犬の呼吸が落ち着いているのを確認して閉める。
この分ならすぐに退院できるだろう。ただし、飼い主に指導はしなければいけないだろうが。
獣医になろうと思ったのも、そういえばクリスマスだったな。
カルテ入力を終えるとカトクが受信を告げた。なにかにつけてタイミングのいいやつだ。
PCの電源を落とすと、自宅にしている二階への階段を通り抜け、勝手口へと急いだ。