Kitten

□とおり雨
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 「まさかぼくより年上なんて」
 「ですよね。勘違いされること多いんです、ソギヒョン童顔だから」

 楽しそうな話し声。お外はまだ雨が降ってるはず。おヒゲがまだしっとりしてるもの。

 「あ、チェンくん起きた?」

 ぼく、いつの間にか寝ちゃってたんだ。ちょんでのおひざでうーんと伸びをした。

 「チェナはほんとうに君が好きみたいだな。もともとひと見知りしない方だけど」
 「そうですか?嬉しいな」

 しんぐぅとはちがうけど、しんぐぅといっしょに寝てるときみたいに安心するんだよ、ちょんでの匂いは。

 「…まだ降ってるね、雨」
 「そうですね。とおり雨だと思ったのに、長居しちゃってすいません」
 「ううん、来てくれて嬉しいよ。雨の日は気が滅入るから…」

 雨が降るとぐぅぐは元気がなくなる。
 どこか遠くにいるみたいな感じがして、ぼくはピョンと飛び降りるとしんぐぅや足にカラダを擦りつけた。ここにいるよねって確認するの。

 「ぼくもちいさい頃は雨は好きじゃなかったな…」
 「……?」

 足元からぼく抱き上げてこんどはぐぅぐのおひざ。

 「両親が仕事のときは祖母の家に預けられてたんですけど、庭に近所の猫とかよく来てたんです。猫の集会所だったのかも?でも、雨が降ると庭に出してもらえないし猫たちも来ないから、家の中に足の悪い祖母とふたりで。親か兄が迎えに来るのを雨を見ながらずっと待ってたんですよね」

 ぐぅぐのぼくを撫でる指が止まる。

 「そう…さみしかったんだね」
 「でも、あるとき祖母が言ったんです。雨が上がったあとは空気が美味しいでしょって。土も木も水をもらって元気になる、ひともおなじよって」

 ちょんでがニコニコすると、遠くにいるようなしんぐぅが遠くじゃなくなってくみたい。

 「あ、祖母の飼ってた年寄り猫もいたから、留守番はふたりと一匹でした。仲間ハズレにしたらあの子に怒られちゃいます」

 ふふふって笑うちょんで。ほら、ちょんでが笑うとぐぅぐも笑うんだ。

 「それで環境学…だっけ?専攻したの?」
 「うーん、かもしれませんね。そうまで意識してなかったけど…。あっ!」

 声をあげてソファから立ち上がると、ちょんでは窓の方へ行った。首を傾げながらしんぐぅもぼくを抱っこしたまま近づく。

 「向こうの空が明るくなってきましたよ?もうすぐ雨が上がりますよ。止まない雨はありませんから」

 ちょんでが振り返ったとき、ぐぅぐのお胸がドクンて大きな音がした。ビックリしてぼくはしんぐぅを見上げたけど、ぐぅぐはちょんでを見たまま気づかない。

 「…そうだね。雨はいつか上がるんだよね……」
 「はい。それに雨あがりの空はすごくきれいだから、雨も悪くないなって思うんです」

 とくんとくんとくん。

 なんだろう?さっきみたく大きくけど、いつもとちがう音がするぐぅぐのお胸。でもイヤな感じはしないから、まあいっか。
 ぼくのおヒゲも雨がもうすぐ上がるって言ってる。晴れたらいいな。そしたらレイヨンやみんなが遊びに来てくれるかもしれないもの。



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