Kitten
□かぞくになった日
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ぅん?
おなかいっぱいになって、あったかい寝床で兄弟たちとふくふく丸まって寝ていたら声がした。
「まだこんなに小さいのに、大丈夫なの?」
「トイレもじぶんで出来るし、エサも市販のやつをふやかしたらいいからさ。あ、起きた。ほら」
兄弟たちはまだオンマに寄り添って眠ってる。ぼくだけ目が覚めちゃったみたい。
うぅ〜んと伸びをしたぼくをヒョイっと持ち上げたのは、るぅぐぅ。大笑いするときれいな顔がちょっとへんになる。いつもたくさん遊んでくれて、ぼくが甘えるとオンマにないしょでおやつもくれるんだ。
なに?遊んでくれるの?
「こいつがいちばん度胸があるんだ」
ツンツンつついてくる指はちょっと乱暴で、兄弟たちはイヤイヤってすることもあるけど、ぼくは平気。捕まえてガジガジ齧ったら面白いもの。
いつもみたいに捕まえようとしたら、しろい知らない手に渡された。
「まゆげみたいな模様だね。なんだか困ってるみたい」
覗き込んできたそのひとは、ふふふと目を細めて小さく笑った。
るぅぐぅとはちがう感じのきれいなかお。笑ってるのに、なんだかすこしさびしそう。
「身体は小さめだけどよく食うし、こいつがいたら少しはおまえもマシな生活するだろ?」
「ひどいな。いまだってちゃんと生活してるよ」
「すぐにめし食うの忘れるくせに。おまえがちゃんとしてるのは仕事だけだろ」
ふたりして話してばかり。
遊んでくれないの?遊んでくれないならおろしてよ。その白い手をサリサリと舐めてみた。
「なに?どうしたの?」
やっとぼくを見てくれたそのひとは、ぼくの抱き直して覗き込んでくる。
胸元からふわっといい匂いがしてあったかくて、遊びたかったはずなのにあごを撫でる指先が気持ちよくて、まぶたが落ちていく。
「いいこだね、ぼくのうちの子になる?」
そのやさしい声に、ぼくは半分寝ながら、うみゃっと返事した。