闇金短編

□髪の毛について
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「加納くんの髪の毛って、すごいサラサラだよね」
そう声が聞こえたかと思ったら、優しい手つきで触られる。
何事かと思い首をひねって見ると、苗字が真剣な顔で髪の毛を触っていた。
「どうした?急に」
大人しく触られながら理由を問う。
「加納くんの髪の毛がサラサラそうだったから、つい」
微笑みながらも手を止める事はなく苗字が答える。
「加納くんはさ、シャンプー何使ってるの?」
よほど俺の髪の毛の触り心地がいいのか、手を止めることなく会話が進んでいく。
「確か、Daianのブラックだったと思う」
「え、同じだ。なのに加納くん超サラサラ。しかも、」
凄くいい匂い。そう言った声はやけに近くで聞こえて。ふわっと同じような、でも少し違う匂いがして。ようやく苗字が匂いを嗅いでいるんだと理解した。
「…そんなに俺の髪の毛気に入った?」
そう問えば、相変わらず嗅いだままでうん。と返ってきて。
「やっぱり、加納くんの髪の毛最高。また触りに行くね」
そうニコニコしながら言われてしまえば、拒否することは出来なくて、金取るぞ。なんて冗談で返してやる。
ていうか、社長が居なくてよかった。もしあんなところを見られたら、間違いなくいびられる。
「…苗字も、いい匂いだったよな…」
ぼそっと呟いた言葉は、誰の耳にも届くことなく消えていった。

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