闇金短編

□胸の大きさについて
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「幸さんって、胸大きいっすよね」
唐突にセクハラと言われてもおかしくない事を言い出すマサル。
「まぁ、Eカップあるからね」
それを特に咎める事もなく答える山田も、胸には自信があるのだろう。
「それに比べてはらつきは…」
「なに。なんか言いたげだけど」
「いや?胸小さいなぁって思っただけだよ?」
胸の大きさがコンプレックスなのか、いつもより対応が冷たい。
「胸なんかねぇ、ありすぎてもなんにもならんの!分かった?!」
「えー、でも、男は大きい方が好きなんじゃないの?」
そう言いながら、話題をふったマサルへ視線を向ける。
「オレは大きい方が好きっすね!やっぱ大きい方が夢が詰まってるっすから!」
キラキラとした目で語るマサルを見る苗字の目は凄く冷めている。
「加納くんは?」
「えっ、俺?」
まさかのこっちへの流れ弾。
「んー。俺はどっちでもいいよ」
ここは当たり障りのない返しをしとこう。苗字の視線が痛いから。
「ふーん。じゃあ、高田くんは?」
今度は山田が高田に意見を求める。
「俺もどっちでもいいですかね。胸の大きさだけが魅力じゃないですし」
流石元ホスト。こういう返しは上手い。
「丑嶋社長は?やっぱ大きい方がいいっすよね?」
高田のいい返しでこの話も終わると思ったのに。
まさか社長にもふるとは思わなかった。
マサルのこういう所はもはや尊敬に値すると思う。普通の奴なら恐ろしくてできないぞ。
「あ?…ンなこと聞いてどうすンだよ。」
「そんな事言わずに!皆答えたんすから、最後は社長の番ですよ!」
「チッ」
あぁ、盛大なため息が聞こえる。
これで社長の機嫌が悪くなったら恨むからな、マサル。
そんな事を思いながら、社長の答えを待つ。
「俺は、他の女の胸の大きさとかはどうでもいい。名前が居ればそれでいいンだよ。」
まさかののろけ。やんわりと答えを逸らしてののろけ。これはなかなかの上級のろけだ。
話しをふったマサルも、まさかの返しに固まっている。
「ほら、これで満足しただろ。とっとと仕事しろ。」
なんとも言えない空気を払ったのは社長の言葉。
ありがたいと思う反面、この空気にしたのは社長じゃないかと冷静に考える自分もいた。

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