闇金短編

□アイスについて
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丑嶋くんに頼まれたおつかいを済ませ、コンビニで買ったガツンとみかんを1口食べる。
「やっぱ夏はこれだよね」
アイスは喉も潤せるし、口の中が冷たくなって気持ちいい。
特にこのガツンとみかんは自分の中でも特に好きなアイスの1つだ。
「あれ、名前ちゃん?」
声をかけられ、顔をあげるとそこには見慣れた戌亥くんの顔。
「戌亥くん。偶然だね」
「ほんと。あれ、丑嶋くんとかは一緒じゃないの?」
「うん。今は丑嶋くんのおつかい帰り〜」
そう言ってインスタントカフェオレの箱が入った袋を見せる。
「丑嶋くん、カフェオレ好きだったっけ?」
「1回うちが作ったやつ飲んで、そっからハマったみたい」
あの時の事を思い出しながら、不思議そうにしている戌亥くんに説明する。
「そういう事ね」
納得したらしく、うんうんと頷いている。
「アイスも食べ終わったし、そろそろ事務所戻らなきゃ」
アイスの棒をゴミ箱に捨てながら戌亥くんの方を振り返る。
「あぁ、俺も一緒に行くよ。丑嶋くんに用があるんだ」
「お、そうだったんだ。じゃあ行こ〜」
そう言って歩き出すと、戌亥くんがさらっと袋を持ってくれた。
「さらっとやるね〜」
からかうような口調で言ったら、お礼はカフェオレでいいよ。と意外な答えが帰ってきた。
「それくらいならいつでも。ちなみにアイスも作れるよ」
「今日は暑いし、アイスでお願いしようかな」
「おっけ〜。承りました!」
そうこうと話している内に、事務所のドアの前についた。
「ただいま〜。戌亥くんも一緒だよ〜」
「やほ、丑嶋くん」
「おう、戌亥。」
「じゃあ戌亥くん、作ってくるね」
そう言って小さいキッチンに行こうとすると、丑嶋くんに呼び止められる。
「戌亥くんに作るんだけど、丑嶋くんも冷たいカフェオレ飲む?」
そう聞けば、少し不機嫌そうに頷く丑嶋くん。
なんで不機嫌なんだろうと考えながら作りに行く。

「お待たせしました〜。名前ちゃん特製アイスカフェオレで〜す」
インスタントだけど。とセルフツッコミをしてテーブルにグラスを置く。
「美味しい」
「アイスも美味しいな。」
「お口にあってよかった」
さっきの不機嫌さは消えていて、勘違いだったかなと思う事にした。
アイスカフェオレを作っている間に用事は終わっていたらしく、カフェオレを飲み干して戌亥くんが席を立つ。
「そんじゃ行くわ。またね、丑嶋くん」
「おう。またな戌亥。」
「気を付けてね〜」
「今度は温かいカフェオレ、作ってね!」
そう言い残して事務所を後にする戌亥くん。
こんなに飲む人が増えるなら、ストックも増やした方がいいなと考えながら丑嶋くんの隣りに座る。
「…戌亥とどこで会ったの。」
自分用にいれたカフェオレを飲んでいると、丑嶋くんが口を開いた。
「事務所の近くのコンビニだよ〜」
嘘をつく必要もないので、本当の事を伝える。
「…ふーん。」
自分から聞いたのにそっけない返事だなと思い丑嶋くんの顔を見る。
その視線はカフェオレに注がれていて。
「そんなにそれ気に入った?」
「美味いけど、俺は温かい方が好きだな。」
そんなに温かいカフェオレを気に入ってた事に少し驚きながら、また作ってあげようと考える。
「あとさ、戌亥には温かいカフェオレ作ンないでよ。」
「え?なんで?」
意外な言葉に驚き、その意味を問う。
「…名前が作った温かいカフェオレは、俺だけが飲みたい、から。」
珍しいわがままに、丑嶋くんの顔をじっと見つめる。
「え、めっちゃ可愛い。急に可愛いこと言わんでよ〜。にやけるやん」
「うるせェ。もうニヤニヤしてンだろ。…で、どうなの?」
「しかたないから、丑嶋くんだけの特別ね!」
とびっきりの笑顔で答えれば、丑嶋くんの顔も少しだけ笑顔になる。
戌亥くんは寒くなってもアイスで我慢してもらわなきゃ。なんて考えながらグラスをキッチンに持っていく。
流石に悪いので、今度戌亥くんに会うときは駄菓子を持っていこうと決めるのだった。

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