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□意外な彼
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「あのー、峯岸さん?」
隣に座る彼に話しかければ、思いっきり無視される。
頬っぺたをツンツンしてみたり、髪を触ってみたり、本を取り上げてみても反応しない。
もう一度問いかけてみると、舌打ちされた。
「私何かしました?」
「別に」
何をしたのか思い出せずに頭を抱える。
横にいる峯岸を見れば、お世辞にも整ってるとは言いがたいのかもしれないが、骨格はとても整ってると思う。
睫毛は意外と長くすべて上向き。
おでこから鼻までの曲線は綺麗で、鼻から顎までの形も色っぽい。
峯岸に吸い込まれる感覚に陥り、目を離せずにいるとまた舌打ちが聞こえ、
「見すぎ、うざい」
と怒られた。
少しだけ落ち込み、また峯岸さんを見ればいとおしさがこみあげてきた。
口が悪いのはすべて照れ隠しだし、目付きが悪いのも可愛い、そして最近見るようになった笑顔、いや微笑みもギャップで可愛い。
たまらなくなり、峯岸さんの頬に一つ口づけを落とす。
そうすれば顔がだんだん赤くなり、目付きも悪くなり、反応が面白かった。
「馬鹿。何がしたいの?」
「愛情表現と機嫌直し」
そう答えれば、はぁ、とため息をつき、本を閉じる。
「今日なんの日か分かる?」
「え?もしかして誕生日?」
「ちがう」
今日がなんの日か考えると、小さなか細い声で
「……記念日」
あー、なるほど。
一人で納得する。
そんなこと気にしてくれたんだと、嬉しくなり峯岸さんを見れば、先程よりも顔を赤くしきまりが悪そうな顔をしている。
「峯岸さん、気にするんですねそういうこと」
ふふっと、笑えばまたうるさいと、怒られてしまった。