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□額にキス
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「ぐわぁー、わかんないよぉぉぉ」

間抜けな声をだして名無しさん先輩は、後ろに倒れる。

「頑張ってください、あと10分やったらおやつの時間ですよ」

名無しさん先輩の提案によって、今日僕の部屋で勉強会をすることになった。

「あ、頑張らせていただきます」

そういうと、起き上がり勉強を再開する。

10分経ち、昨日買ってきたお菓子をお皿に入れ替え先輩にだす。

「わぁ…!ありがと!!」

まるで、おもちゃをもらった犬みたいに目をキラキラと輝かせてお菓子を頬張る。

先輩の姿が愛くるしく見えてきて、思わずくすくすと、笑ってしまう。

「あ、今、子供みたいって思ったでしょ」

「残念、犬です」

「犬かぁ…」

せめて人間が良かったよーと、少しだけ拗ねる名無しさん先輩。

「ところで中3のときの受験って、どうやってたんですか?」

素朴な疑問を投げかける。 

「んー、そうだなぁ。志望校に合格したら、ご褒美をもらうようにしてたなぁ」

「ご褒美…ですか」

案外簡単な答えに、戸惑う。

「うん、テルくんもご褒美誰かから貰ったら、やる気になるんじゃないかな?」

ご褒美……。
頭の中でそれがいっぱいになる。
もし貰うとしたら僕は、もうすでに決めてある。

「じゃあ、僕が志望校に合格したら、名無しさん先輩と付き合いたいです」

僕の気持ちを直球に伝えてみた。
でも、目と目を合わせていうことは出来ず、お菓子を食べながらでしか言えなかった。

先輩からの返答が返ってこず、沈黙が二人を包み込む。
怖くなり、

「名無しさん先輩?」

チラリと横目で、先輩のことを見てみると顔が薄く赤らみ、目が泳いでいた。

先輩もこちらを向き、決心を決めたかのような真剣な眼差しに胸がぎゅうっと、締め付けられた。

「いいよ。待ってるから。もしこれで志望校に落ちたら、ただじゃおかないからね」

その答えに安堵した。
そして、冗談で笑う先輩につられ僕も笑う。

「大丈夫ですよ。必ず受かりますから」

「ん、頼もしい。じゃあ、受かるように魔法をかけてあげる」

そういうと、僕の顔に近より僕の額にそっと、優しく、口づけた。

「額のキスの意味はね、祝福って意味。
どうかあなたの行く先が、幸いで満ちてますように」

目を閉じてもう一度額に口づけを落とす。
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