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□無意識に
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「てるくん?」
その一言で夢から醒めたような気分だった。
「どうしたの?」
キョトンとした顔で僕を見る。
どうやら僕は彼女知らない内に見ていたらしい。
「ご、ごめん。ちょっとぼーとしてて」
とっさに言い訳したが、背中に冷や汗が伝っている感覚がした。
まさか僕が我を忘れて名無しさんを見ていたとは。
恋ってここまで重症になるものなんだと、再認識した。
今度は恐る恐る名無しさんのことを見てみると、艶のある黒髪は開けてある窓から吹いてきた風になびき、シャンプーの香りが僕のもとへとやってくる。
その香りは僕の鼻を刺激し、僕を虜にした。
「てるくんホントに大丈夫?保健室いく?」
「え!あ、大丈夫だよ。ごめん、心配させて」
君に酔いしれていたなんて到底いえない。
「ねぇ名無しさん、今日あいてる?」
勇気を振り絞り聞いてみた。
「あ、ごめん。塾」
「そっか」
名無しさんと喋れたからって、調子に乗るんじゃなかった、と後悔する。
「でも、明日ならあいてるよ。てるくん」
少しだけ顔を赤らめてる君を見て、期待してもいいんだろうか僕は。