main

□無意識に
1ページ/1ページ

「てるくん?」

その一言で夢から醒めたような気分だった。

「どうしたの?」

キョトンとした顔で僕を見る。
どうやら僕は彼女知らない内に見ていたらしい。

「ご、ごめん。ちょっとぼーとしてて」

とっさに言い訳したが、背中に冷や汗が伝っている感覚がした。

まさか僕が我を忘れて名無しさんを見ていたとは。
恋ってここまで重症になるものなんだと、再認識した。

今度は恐る恐る名無しさんのことを見てみると、艶のある黒髪は開けてある窓から吹いてきた風になびき、シャンプーの香りが僕のもとへとやってくる。
その香りは僕の鼻を刺激し、僕を虜にした。

「てるくんホントに大丈夫?保健室いく?」

「え!あ、大丈夫だよ。ごめん、心配させて」

君に酔いしれていたなんて到底いえない。

「ねぇ名無しさん、今日あいてる?」

勇気を振り絞り聞いてみた。

「あ、ごめん。塾」

「そっか」

名無しさんと喋れたからって、調子に乗るんじゃなかった、と後悔する。

「でも、明日ならあいてるよ。てるくん」

少しだけ顔を赤らめてる君を見て、期待してもいいんだろうか僕は。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ