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□ラプンツェル
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女子のグループとすれ違う。
その中に君はいた。
僕の目は何故だか、君の姿だけを捉えようとする。
他の女子には目もくれず。


ある日、君は図書室にいた。

「隣いい?」

僕が問いかけると、君は笑顔で頷く。
君が笑顔になると、長く綺麗な君の髪も何故だか笑ってるような気がした。

名無しさんの隣に座ると、読んでいる本がふと気になった。

「何読んでるの?」

「ラプンツェルだよ。髪が長いお姫様の話なんだ」

ラプンツェル…。
どこかで聞いたことがある。

「次その本借りてもいい?」

興味が湧く。
すると君はまた笑顔で頷く。


名無しさんが読み終わったラプンツェルの本を借りて、生徒会室で読み始めた。

内容は、ラプンツェルという髪の長い少女が魔女と一緒に塔に住んでいて、
魔女はラプンツェルの髪を使い、塔の間を行き帰りしていた。
ある日その魔女の姿を見ていた王子は、魔女の真似してラプンツェルの髪を使い、ラプンツェルに会った。
という物語だった。

「プリンセスに興味があるのか?」

「いえ、友達が読んでいて気になっただけです」

徳川先輩に話しかけられ、すこし驚いたが、いつものように受け答えた。

「しかし、王子は魔女にばれて塔から落ち、失明するんだろう」

「えぇ、ですがラプンツェルの涙でまた見えるようになるんです。先輩よく知ってますね」

「一般常識だ。もう暗いから帰れ」

「はい。お疲れ様でした」


下駄箱に行くと君の姿があった。

「名無しさん!」

「あ、律くん」

一緒に帰ろうというと、また同じ笑顔で頷く。
君と帰ってるときふと、ラプンツェルの物語を思い出した。

「ラプンツェル読んだよ。なんか君に似てる気がした」

「ホントに?」

「うん、髪が長く綺麗なところ」

君の髪が風でなびいていて、その髪に触れる。
すると君は、すこし照れる素振りを見せる。


王子と同じで長く綺麗な君の髪に、きっと僕は囚われてしまった。 

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