【Short】

□透明な教室
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放課後
誰もいない教室。

そう、私たち以外は…誰もいない。


「………し、島崎さん?」

「………」


先生のかけていた眼鏡を
ゆっくりと外して
サラサラな髪に指を通した。

気持ちいい。


「な、なぁ?島崎さん……ふざけるのもいい加減に……」

「………ふざけてると、思う?」

「………でも、アカン」

「なんで?」


先生の両手を机に押さえつけて
押し倒す形で上から彼女を眺めた。

生徒にこんな風にされるなんて
全く予想外な先生は
顔を赤くしたまま、抵抗していた。


「……先生、犯罪者にはなりたくないねんけどっ!!」

「……愛は罪なの?」

「罪、というか…やって、私はアナタの先生やから…っ!なっ?」


必死に言い訳を探す彼女。
ムカついて思わず口を塞いだ。

私の唇で。

目を丸くした彼女を他所に
私は長い間だそれを続けていた。


「…………っは、………なに、してん……」

「………伝わった?」

「……え?」

「私の気持ち、伝わった?」


先生、好き。

歳上の彼女に抱いた憧れと
もっと近づきたい
特別がいいと膨らんだ欲望が

私から、先生へ流れ出す。

終始顔を赤らめっぱなしの
彼女は少しの間無言で
下を向いていた。

そして


「…………待ってる」

「え?何?」

「…………卒業まで、待ってるから」


せやから、と彼女は
起き上がって私の隣に座る。

彼女が私の頭に手を乗せて
優しく微笑んだ。


「…………そんなに焦らんと、今しかない時間を楽しみなさい」


逆光のせいか
そんな先生が眩しくて。

思わず目尻に何が溜まりながらも
私はそれを隠すように


「……………ズルイ……」


俯きながら小さく言葉をこぼした。



Fin
 

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