短編夢小説

□薄れ行く意識(web拍手)
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 小さい頃、俺はよく城を抜け出しては近くにある森に逃げていた。



城に居ては神経がどうかなりそうだったから・・・。
 誰も俺をちゃんと見てくれない。
皆、気味悪がって近づこうとしなかった。


だから、一人になりたくて抜け出す。

城でも一人だが、誰かが居るのに一人になる。のではなく、誰も居ない所で一人になりたかった。



 あの時も一人になりたくて抜け出し、例の森に一人で踏み込んだ。




初めて君を見た時、頭が真っ白になった。


 だって、俺を見るなり


『一緒に遊ぼう』


と声をかけて来たから・・・。

 相手から声をかてきたのは初めてだったから嬉しくて仕方がなかった。

それから毎日、森へ出かけては彼女と遊んでいた。



 唯一の友達。

そう思っていた。


 けれど・・・







突然 別れはやって来る。




 いつものように城から抜け出して森向かうと君がいた。

けれど、いつもの明るい笑顔ではなくどこか寂しげな笑顔で見つめてくる。

『何かあった?』と聞いても大丈夫とだけ。


 日が暮れて帰ろうとした時、俺を呼び止めてこう言った。


『もう私は森は来れない。今日はお別れに来たの』


俺はパニックになって理由を聞いたが、答えてはくれない。


『また、いつか会えるよ』


そう言って彼女はいなくなってしまった。


 次の日に森に行ったが君はいなかった。

その時、あの寂しげな笑顔を思い出す。


君はいなくなってしまった。

 この森からも・・・

この世からも・・・






 俺は今、雨の降っている地面に横たわりながら昔の事を思い出していた。

先ほどまで感じていた背中の痛みはしなくなっている。









「もうすぐ会えるなHoney」





 遠のく意識のなか俺は呟いた。




(END)
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