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□霧中夢中T
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「おっおれ、あの、おれ…」

そう言ってうじうじと俯いてしまった。

あ。コイツもしかして、やっぱりそうか?

「お前さ、もしかして、俺らと一緒に野球やりたいとか?」

俺がソイツの顔を覗き込みながら言うと、真っ赤な顔をしてコクコクと何度も頷いた。

「お、おれ、おれも、野球やりたい、です…」

なんだぁ。やっぱりそうだったのかぁ。
早く言えば良かったのに。
恥かしがり屋なのか?なんか可愛いなコイツ。

俺はニッと笑うと、周りの仲間達の顔を見回した。

仲間達もニッと笑うと、俺の無言の意見に同意するように頷く。

「そうか!そんじゃあ、一緒にやろうぜ!野球!」

そう言うと、ソイツはパッと顔を上げ、目をおおきく見開いた。

「い、いいの?!」
「おう!もちろんだぜ」

ソイツはいかにも嬉しそうにフヒッと笑った。

「そういやお前、名前なんてぇの?俺は浜田。皆には浜ちゃんって呼ばれてるぜ」
「みっ、三橋、廉!」
「へぇ〜、変わった名前してんのな。んじゃあ三橋、これからよろしくな!」
「う、うん!よろしく」

あ。そーだ。丁度いい。コイツにあれをやろうかな。

「ちょっと待ってな」
俺はそう言って家に走って戻り、古い方のグローブを持って来てやった。

「あのさ三橋、お前グローブ持ってねーんじゃねぇか?もしないなら、コレやるから使いなよ」

俺が差し出したお古のグローブを見て、三橋は目をキラキラと輝かせた。
先程までの恥ずかしさのためではなく、今度は嬉しさのためか再び頬が上気する。

「わっ、コレ、ホントにもらっていい の?」
「うん。お古のボロで悪いけど」
「ううん!おれ、大事にする よ!あっありがとう、はっ浜、田くん」
「浜ちゃんでいいって」
「うん、あっありがとう、浜 ちゃん!」

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