Book
□Good-bye days
1ページ/1ページ
Good-bye days
俺はほとんどベッドでしか生活していない。
だから部屋の中はぐちゃぐちゃ。
そのことを以前花井くんに指摘されてから、部屋を片付けようと思い立ちやっと今に至る。
そうして見付けた、ボロボロの子供用グローブと、軟式用ボール。
コレはどっちも俺の宝物だ。
野球を始めるきっかけになった、小学生の頃ギシギシ荘で浜ちゃんからもらったお下がりのグローブ。
そしてあの日、中学のあの時、雪の中で修ちゃんからもらったボール。
浜ちゃんの笑顔。
泣いてた俺以上に、泣きそうだった修ちゃんの顔。
グローブとボール。
楽しかったあの時と、苦しかったあの日々。
どっちももう戻って来ない。
やり直しもきかない。
俺はそれらをそっと撫でる。
そしてボールを手に取り、掌の上で転がす。
「野球辞めんなよ!お前が今までやってたのは違うんだよ!」
思い出す修ちゃんの言葉。
ボールに書かれた文字を読む。
Good-bye days...
そうして反対の掌をギュッと握り締めた。
いつも俺の手に甦る、阿部くんの手の温度。
…and Hello new days.
失ったものもたくさんあるが、代わりに手に入れたものも、それ以上にたくさんある。
俺の新しい日々は、まだ始まったばっかりだ。
END