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□思い 溢れ 止め処なく
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今日は、1年に1度の特別な日。

いつもありがとう。

出会えて良かった。

言葉にしたい。
言いたいことはたくさんあるのに、上手く言えない。

勇気が欲しいよ。









思い 溢れ 止め処なく










「あ、阿部くん、投球練習、付き合ってくれない かな」

おれとしては精一杯の勇気を振り絞って声を掛ける。

「は?今から?なんで?」

もう今日の練習は終わりだと言われ、皆はグラウンド整備を始めている。

阿部くんが不思議に思うのも無理はない。

「投げたかったなら、練習中に言やぁ良かっただろ。あんまたくさん投げ過ぎんなよ?」

違うんだ。
おれが今投げたいのは、普通の練習じゃないんだ。

自分の話し方、伝え方の下手さがもどかしくてたまらない。

「ち、ちが、ちょっと、今、どうしても」

練習着の胸のとこをギュッと握って、ドキドキをごまかす。
逃げ出したいぐらいの恥ずかしさを押さえ込む。

そんなおれのもじもじしている様子に気付いたらしい、グラウンド整備をしている他の皆が、肘でつつきあってこちらを伺い始めた。

阿部くんはおれの様子がなんだかいつもと違うと感じたのか、不審気に眉を寄せる。

「なんか気になることでもあんのか?まぁ少しチェックするぐらいだったらいいけどさ」

や、やった。

「じゃあ、じゅっ、きゅう。10球だけ でいいから。お願い、します」

あまりにおれがもじもじしているものだから、

三橋、大丈夫かぁ?


とハラハラした様子の皆がグラウンド整備をしながら集まり始めた。

俺そっち行こうか?

と花井くんに目で問い掛けられ、おれも

だ、だいじょぶ。

と視線だけで答える。

「10球だけな。いいよ、分かった。じゃあブルペン行くか」

阿部くんが外しかけていたキャッチャー用のプロテクターをもう1度付け直しながらいう。

おれはその言葉に、フルフルと首を振った。

「ブルペン、行かなくて、いい。マウンドから、投げる よ」

そんなおれたちのやり取りを、遠くからではあるが田島くんが身を乗り出さんばかりに伺い、その体を前に出ないように花井くんが押し止どめている。
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