傷から芽生える

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先輩と高倉さんは先輩の家の前の公園にいた。
さすがに1月だと夜は寒いのにどうしてここにいるのかは分からなかったがとにかくそこに行く。
「こんばんは」
「おぅ、陣太。」
先輩はすぐ返事を返したが隣にいた高倉さんはさすがに「…よぉ」と気のない返事だった。
まあ、今日殴られた人にどんな顔をしたらいいのかなんて分からないだろう。
「えっと、今日のことなんだけどーーー」
「いや、いいよ。
あれは私がやったことだから。」
僕が話し始めると、彼女がそう言って止め、さっきまで考えていた謝罪文を初っぱなから折られた。
「なんつうか、こっちこそごめん。
私も何であんなことやったのか分からなかったんだけど、本当にごめん。」
さらに彼女は僕の予想以上に反省しているようで逆に手間取ってしまう。
「いや、いいよ。
どちらかと言ったらそれは山神さんに言って。」
「ああ、でもなんていうか…」
いじめた相手に自分から謝るのが恥ずかしいのだろうか。
「反省してるならそっちに言ってほしいな。」
それを聞くと彼女はぐっと少し黙ってから口を開いた。
「分かった。
いつか行く。」
「ありがとう。
それより今日は殴ってしまいすみませんでした。」
僕はあえて敬語で言うと彼女は僕が殴った頬に手を触れ言う。
「いいよ。
私も殴られるようなことをしたんだし。
数発くらい。」
彼女自身はどうやら許してくれたようだ。
まあ、現実は彼女自身が許したからと言って全て収まるわけではない。
例えば推薦は消されるし、親御さんへの謝罪は別だし、先生からも死ぬほど説教をもらうだろうし。
また、殴った回数なのだが一桁ではなく二桁なのは黙っておこう。
「僕もさっき言ったけど感情的になって本気で殴ってごめん。」
こうして、互いに仲直りしたと思ったときだった。
「ダウトだね。」
今まで口を挟んでこなかった先輩が唐突にそう言った。
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