イータ・ハンター

□魂を食らう者(ソウルイータ)
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魂喰(ソウル・イータ)を私は見た事が無い。
見た事が無いからどんな存在かと言われれば一般的な知識で答えるしかない。
魂喰(ソウル・イータ)は人間の姿をしているが恐ろしくやせ細っていて、足は遅いのに力が強い。
会話は出来るが魂喰(ソウル・イータ)に見逃してもらえる事はなく、一度会ったら執念深く追ってくる。また、とても生命力が強く、四肢を失っても、首さえ繋がっていれば亡者の様に動き続けるのだとか。
最初に現れたのは20年とつい最近。現れてから3年は存在を否定され続けていたが3年後その存在を認められ正式に法で統制する動きが始まった。
確かにいるし、動画を検索すれば魂喰(ソウル・イータ)の映像など五万とあるが本物にあった人などほとんどいないだろう。
だから学校に魂喰(ソウル・イータ)がいると聞いた時、私は見てみたいと思った。丁度、補講授業があり、1人で帰る事になったその日、私は気まぐれで魂喰(ソウル・イータ)を探しに学校を歩きまわっていた。
とりあえず学校の敷地を一周して部室棟のある裏門から学校を出ようとした時、部室棟の方から大きな音が聞こえた。
ゴミ収集車が空き缶を回収する時の軽い金属がぶつかる音がたっぷり数秒間聞こえた。
私は面白そうな匂いを嗅ぎつけ、音の発信源、部室棟の一階へ向かった。
各部活動の部室の扉が並んである真っ直ぐな一本道の突き当たり。そこの扉から大量の空き缶が転がり出ているのが見えた。
空き缶は全て校内の自販機で売られている500mlのコーラの物。それらがここから見ただけで30個以上も転がっている。
さっきの音はきっとこれなのだろう。
音の長さと規模からしてあのコーラ缶はあそこにある二倍。いや、三倍はあるはずだ。
アレだけ大量のコーラ缶が何かしらの原因で全て倒れていたならあの部屋はどうなっているだろう。
そんなわくわくを胸に私は弾んだ足取りで一番奥、サッカー部の部室に来た。
部屋の中を覗き込むと床一面が赤く染まっていた。
コーラの缶の赤ではない。
床一面に広がるコーラ缶の下、今もまだ拡大していく新鮮な血だまりの赤に私は氷水を浴びせられたように体が冷えて行くのを感じた。
本能が警報を今までにないくらいまで全力で鳴らすも目は好奇心に従い、血だまりの源へ向かう。
血だまりの源には首の無い男子生徒が転がっている。
仰向けに倒れている男子生徒の制服のブレザーに付いている赤いピンは私と同じ一年生のマーク。
そしてその子の足もとに立っているのは同じく赤いピンを付けた少女。
その人が誰かより私の目はその人の口とお腹に吸い寄せられた。
割と小柄な少女の口は縦にさけ、校内の赤い肉とサメの様に生えた白い歯が見てとれた。
そして、目線を少し下へ下げると妊婦の様に大きく膨らんだお腹。大きさは丁度男子高校生の頭一つ分くらいか。
それだけで目の前の化け物が何をしたのかしっかりと分かり、私は動いた。
体を反転させ、元来た道へ走る。
止まったら、止まらなくても速度を少しでも緩めたら死ぬ。
だが走り始めてから十歩もしないうちに背に何かがぶつかり私は前へ倒れてしまった。
死ぬ。本当に死ぬ。
後ろから空き缶を蹴り飛ばし近づいてくる音が聞こえる。
私は怖くなって体を丸め、目をきつく閉じて耳をふさいだ。
直後、ふさいだ耳越しに大きな音が聞こえた。
近年、珍しくもなくなってしまったその音は銃声。
一回と思った音は二回、三回と続き計六回。
最後にドンッと一際大きな足音と共にガシャッと空き缶がつぶれる鈍い音がした。
いつの間にか閉じた目は開き、手を耳からどかした私の後ろを掛け足で誰かが走り去る。
顔を上げたその時、身に覚えのある顔が一瞬見えた。
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