傷から芽生える

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私が家のまえに来ると、家の中から怒鳴り声が聞こえ、私は驚いた。
この声は十中八九、父の物だろう。
私は鍵を開けるとただいまを言わずにリビングへと走った。
「謝ってすむか!」
父は目を大きく見開き父の前に座っている人物に怒鳴った。
そして、怒鳴られている方にいるのは早川と、その母親と思われる女性、そして、担任の山田。
それを見て私は今どのような状況にあるのかほぼ分かった。
「何してんの、パパ!」
私が叫ぶと父は私の方を向き、更に目を見開いて怒鳴り返してきた。
「どこに行ってたんだ、燐火!」
「そんなことより何してんのってきいてんの!」
「そんなことどうだっていいだろ。」
「どうでも良くない!」
私と父の喧嘩が始まった。

僕、早川陣太の目の前で親子喧嘩が始まった。
さすがに殴って怒られるのは想定内だったが親子喧嘩が始まるとは思ってなかったので今の状況も忘れ、呆然とした。
「だから、なんであんたがこんな事してんの。」
「親が子を心配するのは当たり前だろう!」
「そんなの望んでない!」
「お前が望もうと望まないと俺は言うこと言わなきゃ落ち着かないんだ!」
二人の喧嘩は苛烈さを増していき、とうとう父親が「もう知るか!」と言って、出て行ってしまった。
高倉さんも「パパに気を使ってもらう必要なんてない!」と言ってリビングから出て行ってしまった。
残された母親と僕達三人は彼らを止められずにただ無言でいるしかなかった。
「…えっと、主人も娘もあんな状態なので今日はお引き取りしてもらっていいですか?」
母親がそう言うので僕たちは出て行くほか仕方なかった。
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