一刀無双の『碧』

□夢物語不続
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講堂の壇上のそで口にはいろんなユニフォームや小物を持った生徒がいて、自分達の番をぐっと喋らずに待っている。
僕もそのうちの一人で白の道義と袴を着て、手には刀を持っている。
予行は模造刀を使っていたが今回持っているのは碧(ホンモノ)。
見つかれば大目玉(下手すれば退学)になるが、部員を集めるために本気の演武をしたいと言う心には(まあ、それだけではないけれど)勝てなかった。
「華道部には三年生、二年生、それぞれ三人ずつの六人で活動しています。
どうぞ、見学、体験に来て下さい!」
華道部の部員たちは深々と礼をして拍手をもらうと直に使った小物を片づけ始めた。
生けた花の花瓶を手に袖へ戻ってきた倉田さんと目が合い、彼女がニコリと笑った。
がんばれと言うことだろう。
俺も手に持った碧を持ち上げ、頷き返す。
『次は居合術部さんの発表です。』
放送部の先輩からマイクを受け取ると舞台へ出た。
ぱちぱちと一年生の多量の拍手がかなり止むと一礼し、マイクの電源を入れる。
「『こんにちは』」
マイクで拡散された音は響き、汚くあまつさえ聞こえにくい。
とりあえず、マイクを切って一年生の方を向く。
若干騒がしい会場を見渡してから、腹に力を入れる。
「こんにちは!居合部部長、八幡鋭刃です」
機会を通さずにはなった声は、騒がしかった会場を一瞬で静まらせた。
そして、静かになったその時を逃がさず、矢継ぎ早に言葉を繋げる。
「居合部の部員は今現在、僕一人ですが、週三日程度、自主練および大菊居合会の皆さんと練習しています。
今日は皆さんに居合を知ってもらうため型を四つ見てもらいたいと思います。」
俺は手に持っていたマイクを置くため小走りで袖に向かい、臨時居合部アシスタントの小島にマイクを預けた。
「合図出したら昨日言った通りに。」
「まかせとけって、お前は大丈夫か?」
「俺は平気だ。」
小島はそれに笑みを返し、俺はステージの中央に戻る。
会場に一礼すると碧を帯刀し、ステージの手前で斜めに正座する。
目の端で、端から小島がステージに上がったのが見えた。
「一本目!」
小島の号令と同時に俺は碧を鞘走らせた。
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