奇妙珍妙紀行

□マッチ売りの少ジョ
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荒木荘童話集『マッチ売りのせしる』

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「マッチ、マッチはいりませんか...?」


ニューヨークの寒空の下、

少女せしるは道行く人に必死に声をかけてマッチを売ります。

雪が降っているのにせしるはお金がなくて靴を買えません。
生唾ゴクリものの綺麗な素足を真っ青にしながら一生懸命声をかけます。

「お金を稼がないと、ウンガロお父さんに
『ヤクが買えねえ』とぶたれてしまうわ...!」




貧しくても少ない自分のお金を削ってバレエを習わせてくれた徐倫お姉ちゃんは半年前にケープ・カナベラルに住んでいる男の人の元へ嫁いでいきました。
お姉ちゃんは家族を置いていくのが嫌でしたが、「祝福しろ」と脅されたのでしぶしぶ了承したのです。


博打が上手くて唯一の稼ぎ頭だったテレンスお兄ちゃんは先日カジノで不良の高校生に負けて、両方でオラオラされてから家に引きこもっています。


いっしょにマッチ売りを手伝ってくれたかわいい弟のミキタカは数ヶ月前に
「宇宙船が私を呼んでいます」
と家を飛び出して行ったきり帰ってきません。


だからせしるしか働き手はいないのです。
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