神様が降りてきたのかと思った。
廊下の窓からその人物が飛び降りてきたとき、神様が降りてきたんだと思った。廊下でばちばちと跳ねる花火の音、彼が飛び降りてきた窓から火花を散らしてパラパラと落ちてきた。

「きれい」

転がるように着地した彼に思わずそう言うと、彼は にいっ、と笑ってわたしに言った。見慣れたはずのその笑顔が、なんだかいつもと違って見えた。

「ここにいると問答無用でフィルチに捕まるぜ。ほらいくぞ!」
「えっ!?ちょっと」

わたしの腕をぐいっと引っ張って、そのまま走り出すその人物。燃えるような赤い髪をなびかせて、飛ぶように前に進んだ。

「フィルチの目の前でドカンと一発さ!あのまーっかな顔!いやー、最高だね」

楽しそうにカラカラと笑いながら、どこまでも走っていく。まるで羽でも生えているみたいだ。

「ねえ!どこまでいくの?」
「あはは、どこまでいく?」

心臓にまで羽が生えたのかも、と、息を切らしながらなすすべもなく 手を引かれて、心は惹かれる。わたし、どうやら恋をしたみたいだ。だってこのままどこまでも、

「どこまでも行きたい」
「いい答えだ」

空がまぶしく、わたしたちの真後ろに影をつくる。風を浴びてさらさらと揺れる赤い髪の毛が綺麗だった。

「神様みたい」



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