george ss

□甘い毒はキスの味
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薬草学の本を読んでいた。ほっつき歩くサボテンを止めるには「棘を引っこ抜くぞ」と脅せばいいらしい。大人しくいうことを聞くようだ。ネビルはこんなものをいつもかじりつくように読んでいるのか。

ソファーに身体を預けて座っていると、後ろから誰かが近づいてきて「なに読んでるの?」とわたしに声をかけた。その言い方と、声で、それが大好きなジョージだと理解する。「薬草学の、」そこまで言いかけて、後ろから覗き込まれて、顔を上げる。そして、額にキス。額にキスって、なんてしあわせなんだろう。

「ジョージは穏やかな顔で笑うよね」
「フレッドよりはいい男だろ」

いい顔で笑うよなあ、と思う。二人とも。

「おしゃべり毒キノコを育ててるって言ったらネビルが貸してくれた」
「おしゃべり毒キノコ?」
「ゾンコに売ってたの。飼い主に似るんだって」
「ずいぶん可愛く育つんだろうね」
「でも毒キノコだよ」

君は僕には毒だよ。甘い毒。
虫歯になりそうなくらいに甘いセリフはきっとフレッドより似合うかもしれない。わたしのとなりに座ると、また穏やかに笑った。

「ね、まぶたにキスして」

目を閉じると、まぶた、頬、首すじ、額の順に、丁寧に丁寧にキスをされた。わたしも同じように、まぶた、頬、首すじ、額。

ジョージは鼻が高いから、どこにキスをするときも、くちびると一緒に必ず触れる。いいなあ、と言うと、ジョージはわたしの鼻にキスをした。

「鼻にキスするときは、どこにもさわらない」
「かわいいね、ジョージ」
「なにそれ」

思い切り引っ張られて、歯と歯がぶつかった。ジョージは ふっ、と笑うと目いっぱい優しく、こんどはくちびるにキスをした。

「どうなっても知らないよ」

そういうこと、をするときの顔だ。どきまぎしながらジョージのことを見つめると、ジョージは ふっ、と笑った。

「かわいい」

こうして隙間なく抱きしめられる毎日が、ずっとずっと続くといいな。たまにフレッドに、見せつけんなーとか言われたり、ジョージのことを好きな、所謂ライバルみたいな女の子に取られそうになったり。そんなドラマみたいな、死ぬほど甘ったるい毎日を送っていけたら。

反転。ソファーに沈み込みこませるようにわたしを押し倒すと、ジョージは丁寧に丁寧にキスをした。心地よい重さに息を吐き、火照るような身体の熱を感じた。

「このまま圧死したいな」
「キスで窒息死と、どっちがいい?」

あ、ちょっと、顔が赤くなるのが、いいな。意識を遠くに飛ばすように、わたしはゆっくりと目を閉じた。


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