george ss

□淡く悲しい朝を
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「ジョージ、ほら朝だよ起きよう」
「ん…フレッドは?もう起きた…?」
「……ジョージってば……」


戦いが終わり、たくさんの人が死んでいった。わたしの両親も兄弟も、もういない。そしてフレッドも。あんなに楽しかった毎日はもう二度と戻ってこない。どうにもこうにも、なにも頭に入ってきてはくれなくて、わたしたちの日常の起点がフレッドだったということを、いやでも思い知らされる。


「あ、first name……」
「おはよう、夢を見てたの?」
「うん、たのしかった。わらってた」


ジョージはちいさな声で言った。ゆっくりと体を起こして、おはようと言ったので、わたしはもういちど、おはようと言った。なんだか泣いてしまいそうだった。ぐっと唇を噛んで、ジョージを見ると、わたしと同じ顔。頬に触れてみたら涙が静かに落ちた。こんなに穏やかなのにね。


「おなかすいたね」
「うん」
「また、ホグワーツのミートパイがたべたいね」
「うん」
「ごはんできたって、おばさんが呼んでるよ」
「うん。ね、first name」


わたしの言葉に頷くだけのジョージが、泣き顔のままで、頬にあった手を掴んだ。


「first nameは、どこにも行かないよな?」


友達も両親も、一度にいろんなものを失って行き場のなくなったわたしに、ここにいてよと言ってくれたのはジョージで。今更どこに行くっていうんだ。わたしだって不安で、わたしだって、



「どこにも行かないよ。ずっとそばにいるよ」



そう言うと、ジョージはわたしを強く抱きしめる。寝起きの匂いがした。







ある晴れた夏の、穏やかな朝のことだった。




淡く悲しい朝を
( フレンチトーストの匂いがするよ )
( ねえ 強く生きていこうね )

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