惚れた腫れたが面倒くさいことは、きっとわたしがいちばんわかっているとおもう。どうしてこう、人を好きになると女の子はこんなに怖くなるんだろう。 なんて、トイレに閉じ込められて水かけられて言えることじゃないけど。それにこんな、クリスマス前の、雪が降り始めた頃に。 「はぁ、」 寒くて寒くて、息が切れた。魔法でいくらでもできたけど、あろうことか杖を談話室においてきてしまったのだ。ポケットにそれがないことに気づいたのは上から滝のような水を浴びた直後だった。身を屈めて暖を取る。 そもそもなんでこんなことになったかというと、ウィーズリー双子をめぐっての女の子の嫉妬、である。セドリックのことも巻き込んじゃって、と言っていたからたぶん、ハッフルパフの子なんだろうなとおもう。 このまま誰にも見つからないで、凍え死ぬのかな、となんとも物騒な想像が頭をよぎる。わたしジョージのことすきだったんだけどなあ。優しくて、おもしろくて、頭の回転も早くて。うまくいかないとき黙ってそばにいてくれるところとか、そのくせちょっと照れ屋だとか、なんか可愛いし。 フレッドもジョージも、わたしがここで震えてると知ったら助けにきてくれるかな?もしもこのまま凍え死んだらジョージは泣いてくれるかな?わたしのことすこしだけでも、好きだって、愛しいなって、おもってくれたかな? ( なんつって ) 「っくしゅ」 「first name?」 幻聴まで聞こえてきた。ああ、わたしもうヤバイんだな、とおもう。 「first name!」 どんどんどん!というドアを叩く音と、息を切らした大好きな声。ここにいるのかと叫ぶ声に、わたしはうん、と返事をする。現実だ、助けにきてくれた。早く、早くここをあけて。 がしゃん、がらがら、というものがぶつかって転がる音がして、それからすぐにドアがあいた。 「助けにきてあげた」 「た、のんでないし」 「ああ、頼まれてない」 寒かったな、と言ってわたしを抱きしめる。自分がちいさいだなんておもったことはないけれど、こんなにすっぽり収まってしまうなんて。心臓が止まりそう、こんなにドキドキしたのはじめてだ。 「戻ろうか、談話室」 「んー、もーちょっとこうしてて」 心臓の音が聞こえた。愛しいなあ、とうれしくなって鼻をすすると、お前さ、といってわたしの顔を見つめる。 「頼むから、心配かけないで」 「それならわたしのことちゃんと見てて、離れないようにして」 返事のかわりに唇を、わたしの額に押し付ける。どう落とし前をつけてくれるっていうんだ、ジョージ。あなたのせいで今後だれも好きになれそうにないわ。 「好きよ」 「わかってるよ」 ぎゅう、と彼の背中に腕をまわす。だれになにをされたって、離れてたまるか。次にあの、ハッフルパフの女の子たちにあったら、自慢してやろう。こんどは負けたりなんか、しないんだから。 Power of Love! (そういえばここ女子トイレだね) (あれそうだっけ) |