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□DQM-J
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キャプテン・クロウが仲間になり、数日経ったある日。
戦いばかりの日々が続き、決して言わないがスペーディオ達は体や心共に疲れ果てていた。
ジョーカーはそんなモンスター達を思い、休息を取るためノビス島へ行くことに。
ここなら強いモンスターもおらず、環境も良いことから心身ともに皆を落ち着かせてくれるだろう。
「じゃあ、みんなこの島の範囲で好きに行動してくれ。俺はこの滝の近くにいるから。」
そう言って、メインとスタンバイ中のモンスターは体を休めるために散り散りに。
しかし、スペーディオとクロウはジョーカーの傍から離れることはなかった。
『犬っころの分際で、ジョーカーにつきまとう気か。』
『生憎だが…私は一応“神獣”だ。どこでも勝手に動き回るのは、性に合わん。』
『どうせ貴様のことだ、私がジョーカーと一緒にいるのが気に食わんのだろう?』
『………』
スペーディオは口を閉ざし、ギロリとクロウを見据える。
そんなスペーディオの姿に、クロウはやれやれと肩を落とした。
『フン…良いだろう、今日だけは見逃してやる。』
言って、クロウはクルリときびすを返し、どこかへ向かって歩き出す。
クロウが言ったのを確認すると、スペーディオは滝の傍で寝転がるジョーカーの元へ。
ジョーカーはうとうとしているのか、今にでも眠ってしまいそうだった。
そんなジョーカーの姿に薄く笑みを浮かべながら、スペーディオは彼の隣に腰かけた。
遠くで野生のスライムがぽよぽよと跳ねる姿を横目に、空を見上げる。
いつも独りだったから、こんなに気休めができることなんてなかった。
余裕なんてなかったから、こんな風に空を見上げることも出来なかった。
もし、ジョーカーに出会うことなく時が過ぎていけば、どうなっただろう。
決して心を許さぬ人間どもに追われ、自らこの姿を消しただろうか?
神に選ばれし、モンスターマスターよ
汝は私と出会うことを知っていたのだろうか?
何れにせよ、運命と言う歯車に踊らされるのも……
時には悪くないのかも…しれないな――
「スペーディオ…?」
『……起こしてしまったか?』
「いいや、完全に寝てはいないよ。」
言ってゆっくりと体を起こしながら、ジョーカーは大きく伸びをする。
「ん?」
ジョーカーが起き上がると同時に、自分の腹の上に妙な違和感が。
いつの間にか、野生のスライムがジョーカーの腹の上でぽよぽよと跳ねていた。
スライムは襲い掛かる様子もなく、まるで遊んでくれと言わんばかりに擦り寄ってくる。
『スカウトせずに、野生の者にまで好かれるとは…さすがだな、ジョーカー。』
「お褒めの言葉として、受け取っておくよ。」
クスリと笑みを浮かべ、ジョーカーはスライムの頭をそっと撫でる。
スライムはその優しい感触に、気持ち良さそうに目を閉じた。
『ところで…今日は一体、どういう風の吹き回しだ?』
「………」
どこか遠い眼差しで空を眺め、ジョーカーは何も語ろうとはしない。
そんな彼の表情に、スライムはどこか不思議そうに彼を眺めていた。
時折見せる、ジョーカーの弱々しい眼差し。
大人びいている彼は、一体何を見据え、何を考えるのか。
何のためにモンスターと共にし、共に戦うのか。
その答えが導かれし時、私の真の役目を見つけられそうだ。
その時まで、共に歩もう。
先の見えぬ未来を――
2007/4/2
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