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□司が小さくなりました
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「〜っ!クソォ…こがな姿じゃけぇ、涙もろいんじゃ…!」
ぐしぐしと目を擦り、司は涙を拭おうとする。
だが、段野はパッと司の腕を掴んで止めた。
「擦りすぎじゃい、赤ォなるど。」
「や、やかましいっ!!」
バッと勢いよく腕を振り払い、陽二の姿を見つけるなりすぐに後ろに隠れてしまう。
後ろに回りこまれた陽二も、一体何事かと首を傾げていた。
「……極楽蝶の。」
どこか重々しいような声で、段野は陽二を呼ぶ。
「な、何じゃい……」
「後ろの…そのボウズは、ホンマに司なんか?」
(いつ分かったんじゃい、段野は……)
だが、今はそんな事はどうでもいい。
彼らに後ろにいるのが、今の司の姿なんだと伝えていいものか。
これが敵に教えるなら話は変わるが、相手はビーストの連中だ。
――おそらく、問題ないとは思うのだが。
「まあ、二人なら話しても大丈夫じゃろ……」
陽二は一度息を吐くと、空を煽るように眺める。
そして、淡々とした口調で話し始めた。
「今日の朝…司はこがな姿になっとったんじゃ。原因はワシらにも分からん。じゃけェ、早ぉ元ン戻る方法を探さにゃあいけんのんよ。」
「「…………」」
半ば、呆れているような複雑な表情をした二人。
今、話していたことは本当に真実なのか。
それすら疑問に思わせるほどの内容だった。
彼らの周りに、やけに重々しい空気が漂う。
しばらく口を閉ざしていた二人の内、先に口を開いたのは数だった。
「まあ…コレ見りゃあ、信じらんわけにもいかんでよ。」
苦笑しながらも、数は今の状況を飲み込もうとする。
完全に信じることはできないが、これだけそっくりの人物がいれば話は本当なのか。
「のォ?秀……」
数が呼ぶ当の段野は下へしゃがみ込み、司の頬をぶにー…と引っ張って遊んでいた。
一方の司も、いやいやと逃れようとするも、力の差は歴然。
段野のされるがままになっていたのだった。
「何やっとんじゃい!秀ぇ!!」
「あ…いや、ついな。」
言って、苦笑しながらもまだ司を弄る手を止めない段野。
司が止めてくれー…と、まるでやわらか戦車のように、ふにゃふにゃになっていた。
「はー、止めたれや…いくら子供ン姿ぁ言うても、中身は司なんじゃけェ。」
「じゃがのォ…おもろいど、こんなぁ。」
「おいおい……」
まるで子供におもちゃを与えたときのように、段野の表情は生き生きとしていた。
もともと子供好きなのだろうか、司が目を回していようとも、離そうとはしなかった。
「段野、そろそろ…ウチの頭ぁ、返してもらえんかの?はー、移動するけぇ……」
なるべく穏やかに、陽二も段野に声をかける。
だが、まさか段野の口からそんな言葉が返ってくるとは思いもよらなかった。
「もうちょい、貸しといてくれや。」
言って、ノビている司を掴むとさっさと歩き出してしまう。
あまりの衝撃的なことに、陽二や数も唖然としていたが、すぐに陽二はハッと我に帰る。
「な…なに言いよんならぁ!返さんかい!コラァ!!」
「………」
すぐにギラリと段野の鋭い眼光に睨まれるが、陽二もここで身を引けない。
自分らの頭が連れていかれているのに、見捨てるような根性なしではないのだから。
大体、段野が何を考えているのか、それすらも分からなかった。
「心配せんでもえー…ワシも協力したるよ。」
「じゃが、司を連れて行く理由があるかいや!」
「ああ……」
言って、段野はチラリと司に視線を向ける。
「今の司ぁ…“ますこっときゃら”みとぉな。じゃけぇ、連れとったら可愛えかろォが。それに、口で言うより実際に見らんと信じるモンも信じらんでよ。」
「「…………」」
デカい巨体に似合わず、まさか“マスコットキャラ”の言葉が出るとは。
このとき数は、段野はプラモデルの他に可愛いもの好きだと知ってしまった瞬間だった。
2007/3/16
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