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□タイムリミット
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黒い空には、まるで浮き彫りように輝く月。
それは血のように赤く、不気味なほど辺りを照らしていた。
「み…んな……」
俺の体はもうボロボロで。
こうして仲間の元へ戻れただけでも奇跡なのか。
「アキラ!どうしたよ?!その格好は!」
マルの声が、やけに遠く聞こえるような気がした。
だが、俺はブルブルと首を振り、飛んでいきそうになる意識を呼び戻す。
「俺らの力じゃ、どうにもならなかった…え…江口さんが危ねェ…!」
「「「?!」」」
俺の言葉に、三人は驚きを隠せないでいる。
そりゃ、当たり前だろうな。
あの江口さんがピンチに陥るなんてことは、今までなかったんだから。
「詳細は分からねェが…とりあえず、俺らも加勢に行くべ!」
「「おう!」」
眠っている単車を叩き起こし、それぞれがそれに跨る。
俺の体は言うことをきかないから、マルのケツに乗せてもらうことにした。
◆ ◆ ◆
「……アキラがあのザマだ、相当ヤベェ奴らみてェだべな。」
「ああ…」
原沢と桜井は眉をひそめ、互いに苦笑した。
「アキラ、相手は何人よ?」
「分からねェ…半端なく多すぎんだ…しかも、江口さんのコンディションが悪すぎる……」
「……タイムリミットは、あと数分って所か。」
「間に合いそうか…?」
「さあな…けどよ、意地でも間に合わせなきゃなんねェ時もあるもんだべ。」
「頼むぜ…マル……」
今の俺に…
今の俺らに何ができるか分からねェけど
このまま指をくわえているのは嫌だ
江口さん…
あなたを独りで逝かせはしない
俺達が行くまで
どうかお願いです
そのままの姿で
いつもの姿で
俺達にその姿を見せてください
俺達に残された時間…
タイムリミットまであと――
2008/8/1