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□山盛りキャベツ
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「腹減ったなぁ……」
 アキラの家で人生ゲームをしていた五人。
 江口のこの一言で、一時ゲームは中断された。
「江口さん、まだ昼前っスよ?」
「そこら辺、走って来たならまだしも。」
「速攻でアキラん家に集まって。」
「朝から人生ゲームづくしだったじゃないスか。」
 アキラ、マル、桜井、原沢の順に江口に疑問を投げかける。
 それでも江口は、頬をぷうっと膨らませていた。

「だってよぉ…減るモンは減るべーよ?自然の原理には逆らえねーべ。」
 江口の言葉に、少なからず納得する四人。
 だが、自分達は空腹でなかったため、苦笑をせざるを得ない。
「アキラ、何かねェんか?」
「さあ…どうですかね。とりあえず見てみますよ。」
 言って、アキラは部屋の外へと出ていく。
 そんなアキラの姿を、目で追っていた江口。
 彼はしばらく考えた後、何を思ったのか後を追うように部屋を出ていった。

「……江口さん、何であんなに腹減ってんだろうなぁ。」
「マルよぉ、そこの所はツッこむべきじゃねェべ。」
 突然のマルの発言に、原沢が口を挟む。
「そうそう。江口さんは俺らより暴れるから、燃費が悪いんだろうな。……別の意味で。」
 同じく、桜井も原沢に同感すべくうんうんと頷いた。
「別の意味で、か……」
 江口とアキラの濃厚な関係を知っている三人。
 三人は互いに顔を見合わせると、小さく溜息を吐いたのだった。



 ◆ ◆ ◆



 その頃、台所で食料を探しているアキラと、イスに座ってうなだれている江口。
 江口の口からは、腹減ったコールが続いていた。
「江口さん、何でそんなに腹減ってるんスか?」
「何でって、そりゃおめー…おっ!このダンボールの中身は何だっ!」
 言って、話の途中だったが、飛びつくように冷蔵庫の横に積んであった、ダンボールの箱に駆け寄る。
 横でアキラが何かを言っていたが、江口は聞く耳持たずに箱を開封してしまう。
 だが、中身を見た途端に思い切り顔をしかめた。

「……アキラ。」
「何スか?」
「何よ、コレは。」
「え、何って……」
 アキラがひょいとダンボールを覗き込むと、たくさんの黄緑色の丸い物が。
 それは、箱の中で無造作にゴロゴロと入っていた。


「キャベツ…っスね。」


 どこをどう見ても、ただのキャベツ。
 アキラは、そうしか言いようがなかった。
 だが、何が気に障ったのか江口は勢いよく振り向くと、アキラに掴みかかる。
「こんな所に、野菜なんか置くんじゃねーべ!アキラぁ!!」
「そ、そう言われたって、ウチは八百屋っスよ?!それに、野菜なんかどこにでも置いてますって!」
「バカヤロウ!台所にはカップ麺を置くのが常識だべがーー!」
「意味不明っスよ!江口さーん!!」
 この後も、二人の意味不明な言い合いっこが台所中を木霊していたのであった。

 2008/02/13


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