□四魂の玉の噂
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「さてと」


少女は畑の横を流れている川の跡に目を向けた。

もしこの近くに湧き水や湖があれば…
無かったら大きな川でもいい。
そこから水を引いてこの川に流そう。

目を閉じて再び意識を集中させる。


水の気配……あった!!

川の上流から少し外れたところに水が湧き出ているところがある。その水は小さな池につながっているが、山の奥深くだから使ってる人などいないだろう。

水は綺麗だし、そこの湧き水でいいか。


少女は湧き水のある方向に手を伸ばし、川の上流に手を動かした。



「しばらく待っててください」


少女は笑顔でそう言って、川の方を見た。

少しすると川の上流から水がサラサラとと流れてくる。


「綺麗な水だ!」


村人が言った。
皆が感嘆している間にも、水かさはどんどん増していく。

子供たちがはしゃいで水の中に入って行った。

一人の男の子が水を手で救って飲む。


「おいしー!!」

「この水は、山の湧き水から引いているんだよ」


少女は再び虹珠草の種を取り出した。


「みんなお腹がすいているでしょう?」


子供たちは不思議そうに少女の行動を見守る。
少女は子供たちの遊ぶ川の近くに虹珠草の種をまいて、桃の木を生やした。


「わぁ〜!!」


子供たちの顔がみるみる明るくなっていく。

少女は軽い足取りで木に登って桃を腕いっぱいに取って来た。


「はい!」


子供たちや村の人々に桃を手渡す。


子供たちが桃を頬張る傍らで、村人の話し声が聞こえた。


「すごい能力じゃ」

「きっと四魂の玉の力を使っているに違いない」

「持つ者の願いが叶うという玉のことか」

「ああ、再び甦ったらしいな」


何のことだろうと思っていると、村の長老らしき老女に声をかけられた。


「そなた、“神能”じゃな?」


その言葉に少女は一瞬固まり、様子を伺うように答えた。


「そう……です」

「神能は妖怪にしかいないと聞くが…そなた妖怪か!?」


“妖怪”という言葉が出た途端、村の者の視線が一斉に集まる。
暫くの静寂の後、少女は仕方なくかぶっていた笠を取った。


「妖怪じゃありません。“半妖”です」


笠にかくしていた銀色の髪がほどけて風になびく。
同時に頭についた犬の耳も姿を現した。

村人達はその姿を見て息を呑む。

少女の金色の瞳を睨みつけ長老が言った。


「半妖、この村に何をしに来た!」




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