愛しているから
□結界
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小鳥のさえずりが聞こえる中を犬夜叉一行は歩いていた。
奈落を倒すために旅を再開するらしい。
自分のせいで旅が中断していたのはなんとなく分かっていたから少し申し訳ない気持ちがあったが、皆はさほど気にしてはいないようだった。
「奈落って、どんな人なのかな……」
小さく呟いた美麗の声に気づいて、珊瑚が教えてくれた。
「あいつは最低な奴だよ。あたしの弟を操って家族を殺させたうえに、退治屋の里まで滅ぼしたんだ」
それに続けて弥勒様も言う。
「犬夜叉と桔梗様を騙して憎しみ合わせ、私の祖父にも風穴の呪いをかけた……」
「風穴?」
「奈落は私の祖父、弥萢法師と戦って右手に風穴というなんでも吸い込んでしまう穴を開けたのです。これは奈落を倒すまで解けない呪いで、孫の私まで受け継がれてきました」
呪い…
弥勒はぎゅっと握りしめた右手を見つめた。
「今はこの数珠で封印していますが、やがては広がった風穴に私自身も……」
「法師様…!」
珊瑚が弥勒の話を遮る。
その先は言われなくても理解出来た。
これが好きな人の運命なのだとしたら、信じたくないよね……
でも…
「だ、大丈夫よ!」
美麗の言葉に皆の視線が集まる。
「皆さんならきっと奈落を倒せると思います!」
驚いて黙り込むみんな。
そこで美麗は我に返った。
「あ、ごめんなさい…奈落のことを知りもしないで…」
私ってばどうしてこんなに思ったことを何でも言っちゃうんだろう。
美麗の謝罪の言葉は、どんどん小さくなっていく。
気を悪くしたかもしれない、そんな不安に駆られながら、恐る恐るみんなのことを見た。
「……」
少しの沈黙の後、犬夜叉がぼそりと言った。
「そのとおりだ」
「え?」
「俺たちならきっと奈落を倒せる。何があっても倒してみせる」
かごめも美麗に笑顔を向ける。
「そうよね!私たちに出来ないことなんてないわ!」
「そうじゃそうじゃ!」
皆の自信に満ちた顔を見て、この人達ならどんな強敵でも倒してしまえそうだと思った。
そんなこんなで歩いていくうちに、ひとつの村が見えてきた。
「ねえ、あの村に寄らない?ちょっと疲れちゃったし」
「そうだね」
かごめに賛同した一行は村によることにした。
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