愛しているから

□気になる彼
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もう片方の膝にも擦り傷を作った美麗は、村に帰るなり七宝に抱きつかれた。


「し、七宝ちゃん!?」

「わーん!美麗〜!!」


心配しててくれたのね。


「ごめんね、心配かけちゃって。七宝ちゃんが犬夜叉を呼んできてくれたの?」

「そうじゃ〜」


七宝ちゃんは鼻水を垂らしながら真っ赤に腫れた目を私に向けた。


「ありがとう。七宝ちゃんのおかげで帰って来られたわ」

「美麗ちゃん!」


かごめに珊瑚、それから弥勒と楓も駆け寄ってきた。


「みなさん、心配かけてごめんなさい」

「いいよ。美麗ちゃんが無事でよかった」


頭を下げた美麗に珊瑚が優しく声をかけてくれる。


「膝、大丈夫?」

「あ……」


一気に美麗の顔が真っ赤になった。
丘を駆け下りて転んだなんて言えるわけない…!
しかし美麗の気持ちに全く気づかない犬夜叉が茶化すような目で言った。


「こいつ、帰る途中で丘から転げ落…ふごっ!?」

「な、なんでもありませんから!」


犬夜叉の口を力いっぱい抑えて、引きつった笑みをみんなに向ける。


「し、茂みから出てきた野ウサギに驚いてしまって…」

「なんと!美麗様のお綺麗な脚に傷をつけるなど……
私が手当てをして差し上げましょう!」


そう言う弥勒に、珊瑚がジトっとした目を向ける。
代わりに楓が言った。


「いや、手当てはわしがしよう」

「楓様、ありがとうございます」



こんなにも優しい仲間で良かった。
現代の家だったら、冷たい目で見られるだけだったかもしれない。


その時、ぐぅ…とお腹が鳴った。
みんなの視線が一気に集まる。

真っ赤になっていく美麗の顔。


「あ、あの、もうお昼過ぎてるからお腹がすいちゃって……」


かごめがクスクスと笑った。
そのせいでさらに赤くなる美麗。


「じゃあ、ちょっと遅めのお昼ご飯にしよう!」

「はい…!」


美麗は笑みを浮かべた。


「ひとまず楓様の家に行きましょう」


弥勒を先頭に、みんなが楓の家に向かう。


犬夜叉がひらりと美麗を追い抜かす。
その綺麗な髪が風になびくのを見て、殺生丸のことを思い出した。

たった少し前の出来事なのに、何故か形のはっきりしないぼんやりした思い出のように感じられる。
実はあれは幻で、もう殺生丸には会えないんじゃないかとさえ思った。


でも、

────またいつか、会えるよね。



そう自分に言い聞かせてみんなの後を追った。





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