愛しているから

□気になる彼
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村に戻ってから、犬夜叉にさんざん怒られた。

殺生丸は冷酷非道で、自分の邪魔をするものは簡単に殺してしまう恐ろしいやつだと聞かされた。
だが、一緒に話した時はそんな感じはしなかった。確かに愛想はなかったが、殺されそうになったわけでもない。


「……もしかして犬夜叉、殺生丸のこと誤解してるんじゃないの?」


丘の上に座り、犬夜叉の説教を聞きながら近くの花を見つめていた美麗は、ふと顔を上げて言った。


「どういうことでい」


訳が分からないという顔をする犬夜叉。


「殺生丸、はじめはすごく無愛想だったけど、普通に話してくれたよ?」

「それは…何故かは分かんねえけど」


少し考えて犬夜叉が言う。


「お前が百合に似てるって気づいたのかもな」


そっか、知り合いって言ってたもんね。
納得する美麗とは対照的に、犬夜叉は難しい顔をしていた。

殺生丸が優しいのがそんなに珍しい事なの?
それとも、なにか他に気になることがあるのかな…
そんなことを考えていると、犬夜叉がすくっと立ち上がった。


「もう帰ろうぜ。腹減ったし、七宝が心配してたぞ」


七宝ちゃんが?


「そうだよね、迷惑かけちゃった。
犬夜叉も、探しに来てくれてありがとうね」


私は、犬夜叉にほほ笑みかけた。


「べ、別に俺は七宝に頼まれただけでい」

「そっか」


あからさますぎる照れ隠しに思わず笑みがこぼれる。


「ふふっ」

「な、なんでい」

「何でもない。
ほら、行こう!」


美麗は丘を駆け下りる。
何故だか久しぶりに開放的な気分だった。


「どわ、ちょっ、待て!!」




お腹空いたー!
美麗はどんどんスピードを上げていった。




そして、足がもつれて見事に転んだ。





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