愛しているから

□運命の出会い
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次の日。

お風呂が無いと聞いてショックを受けていた美麗を、かごめと珊瑚が水浴びに誘ってくれた。

祖母の家には土日の間滞在するつもりでカバンに色々なものを用意していたので、タオルやヘアゴムなどをまとめて村の近くの川へ持っていった。


「冷たい!」


もうすぐ夏だけど、流石に川の水は冷たすぎた。が、もう服も脱いでしまったので、なんとか我慢して肩まで水に浸かる。
川の深さは普通の風呂よりも少し深いぐらいだ。

戦国時代には勿論石鹸などは無いが、小さいボトルに入ったボディーソープやシャンプーを持っていたので、かごめや珊瑚にも貸してあげた。


体や頭を洗い終わった頃にはもう冷たさにも慣れ、3人で水に浸かってのんびりと話をした。


「ねぇ、美麗ちゃんは好きな子とかいるの?」

「え…」


一昨日美優にもされた質問だ。
女子って恋バナが好きだなぁ、なんて思った。珊瑚も興味津々だし、いつの時代でも女子はこういう話が好きらしい。


「いません。私、婚約者がいるから……」


余計なことを言ってしまった、と美麗は思った。
自分でもあまり思い出したくないことなのに。それにまだ婚約者を認めた訳では無い。


「え! 今どきそんなの珍しいわね〜」


と言うかごめに、珊瑚が聞く。


「婚約者って?」

「んーと、祝言を挙げる約束をしている人のことよ」

「へ〜え、その人の事は好きじゃないの?」


目を丸くする珊瑚。


「好きっていうか、まだ会ったことがないんです。親が勝手に決めたので…」

「相手と約束したんじゃないんだ〜。何か、お金持ちのお嬢さまみたいね」


珊瑚もうんうんと頷いている。
かごめは続ける。


「美麗ちゃん、苗字九条なんでしょ? もしかしたらあの有名な九条グループのご令嬢だったりして〜」

「え…よく分かりましたね…」


もちろん苗字だけで分かるはずがない。
かごめは冗談で言ったつもりだったが、美麗から予想外の言葉が帰ってきたために目を点にする。


「え…?」


沈黙。


「うそ────────!!!!!」

「!!?」


かごめの叫び声に美麗の肩がびくりと跳ねた。
珊瑚だけは“グループ”だの何だのの意味が分からずに頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。



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