愛しているから

□少女の前世
1ページ/3ページ






「ここが楓ばばあのいる村だ」


犬夜叉達の案内で楓のいる村へ着いた。

小さくて、こじんまりとした村。
でも、どこか懐かしいような暖かいような、そんな感じがする。


「もうすっかり暗くなっちゃってるから、早く行こう」


珊瑚がそう言って先頭を歩く。
ほかの者もそれに続いて歩調を早めた。


楓の家の前に着くと、かごめが中を覗いて声をかけた。


「楓ばあちゃん、今晩泊まってもいい?」

「おお、かごめか」


囲炉裏の前に座っていた楓は、入口に声をかけた。


「もちろん良いぞ」


一行がぞろぞろと楓の家の中へ入る。
最後に入った美麗は、楓に軽く会釈した。


「はじめまして。九条 美麗と言います」

「お、お前は……」


楓は、顔を見た途端驚いたように固まった。


「百合おねえさまに似ている!」


百合?


「えー!?もう一人お姉さんがいたの!?」


驚いた顔のかごめ。
ほかのみんなも状況が全くわからないようで、楓と美麗を交互に見る。
犬夜叉だけは、落ち着いて話を聞いていた。


「百合おねえさまというのは、姉ではなく従姉妹だ」


楓さんが言った。


「とりあえず座っとくれ」



土間に立っていた皆を楓は私達を囲炉裏の前へと案内した。


「百合おねえさまというのは、わしらと同じく巫女だったんだがな…」


みんなが座ったのを確認すると、楓が話し出した。


「妖怪に殺されたのだ」



殺された…?
妖怪に?

私は先程の百足のような妖怪を思い出して身震いした。


「楓様、その話をもっと詳しく聞かせてくれませぬか」


弥勒さまが身を乗り出して言う。


「わ、私も気になります」


美麗はううむと唸っている楓に催促するように言った。


「わしもその事はよくわからんのだ」


楓さんは顔を上げて言う。


「なにしろ、それについて詳しく知っているのは桔梗お姉さまだけだったからのう」


桔梗…?
あの夢に出てきた名前…!!

私は思い切ってそれを言うことにした。


「あの!」


美麗の声に、みんなの注目が集まる。
視線を感じて緊張しながらも、ひとつひとつ言葉を発した。


「私、ここに来る前に、夢みたいなものを見たんです。そこで声が聞こえて…『“しこんのたま”を桔梗と共に守れ』って…」

「“四魂の玉”じゃと!?」


七宝が声を上げた。





●●
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ