□Episode.02
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私は談話室までの短い道のりを少し早足で歩いていた。すでに放課後になって数十分が経っている。数か月の授業の遅れは思いのほか痛手で、前の学校よりも多少授業が難しいこともあってノートをとるだけでも一苦労だった。おかげで特別授業の初日から慌てるハメになってしまった。もうみんな集まってるかな……。先輩も多かったし、一人だけ遅れるなんて嫌だな……。

談話室の前で一息つく。人の気配はするけど騒がしくはない。まだ全員は揃ってないのだろうか。安心しつつも恐る恐る扉を開けると、そこには三人の人影があった。

「あ!また一人来た!きみ、円のクラスの転校生なんだってね?こんな時期の転校なんて、なにか裏がありそうでわくわくするよね!」

「潜入捜査ですか。裏社会の人間がまさか自分のクラスに編入してくるとは思いませんでした。央が目的なら受けて立ちます」

「おおっ、僕を巡っての争い?なんだか僕、人気者!?」

「央は常に世界中の人気者です。その調子の良いところなんか、全人類が放っておくはずがありません」

今日も元気に騒いでいるのはあの先輩だった。クラスメイトの男の子……円くんも、昨日と同じようにフォローになっているのかいないのかわからない発言に徹している。

「あ、そうそう。今ね、あの頭のよさそうな二人がセンセーを呼びに行ってくれてるから、待ってるところなんだ。間に合ってよかったね!」

「はい、よかったです」

頭のよさそうな、というのは撫子先輩と理一郎先輩のことだよね。

「うむ?そなた、いつのまに……?」

「ついさっきだよ。終夜はずっと本読んでるね」

「うむ。古い書籍には先人の知恵が詰め込まれている。未知なる知識を得ることは人を豊かにする多大な要因であるからな」

「そっか。読書が好きなんだ」

いくら好きでも授業中もお昼も休みの時間も読み続けているというのはおかしいような気がするけど、終夜にとってはこれが普通なんだろう。あまり褒められたことではないけど、そんなふうに熱中できるものがあること自体はとても羨ましく思う。
そうしていると、がらがら、と扉の開く音がした。

「あれれ?センセーは?っていうか、そこの人、だれ??」

入って来たのは三人。でもそこに神賀先生の姿はなかった。撫子先輩と、理一郎先輩と……。

「え、お兄ちゃん?」
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