春日山城

□鏡の向こう
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「はぁ…」

「…」

「…ふぅ……」

「…」

「あぁ……」

「…目障りだ」







春日山城の広間には
物思いにふけったようにため息ばかり
つく武田信玄と

それに凍るような視線を送っている
この城の城主、上杉謙信

主君の様子を伺っている真田幸村

3人の戦国武将の存在を忘れて
まきびしの手入れをしている猿飛佐助がいた







「紅…といったな
あの日から片時も忘れたことはない」

「忘れろ」

「誰なんですか、信玄様ずーっと
その紅とかいう名前を
呟いてはこんな感じなんですけど」

「さぁ、知らんな
こいつが夢に見た天女の話など」






上杉謙信は真田幸村の質問にそう答え
杯をあおった





「あれは夢なんかじゃない
俺はあの日、確かにこの目で見た
白い肌に、色の薄い髪、瞳の色は
左右で違っていた、そしてあの
鈴の音のような可憐な声……」

「色白で、薄い色の髪で、目の色が
左右で違う…それって謙信様じゃ…」

「!!そうか!!!」







幸村の言葉に武田信玄は大きな声をだし
立ち上がって謙信に向かった








「謙信、一生の頼みだ」

「断る」






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