IDOLiSH7

□王様プリン
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「アイドル??」




一瞬、自分の耳を疑った
私は隣で好物の王様プリンを
パクパクと食べている環の言った単語をそのまま復唱した




「そ、俺、アイドルんなって
有名んなって、テレビ出て
理のことぜってぇ見つける」

「理ちゃんって、環の妹の?」

「俺が有名んなってテレビ出たら
理の方から会いに来てくれるかもしんねぇじゃん?
だから、アイドルになんの」




アイドルになろうと思うんだけど、という相談なんかじゃなく アイドルになるという報告だった


確かに環はかっこいい
スポーツもできるし、運動神経いいし
ちょっと性格がぐーたらなとこもあるけど、それらマイナス面を差し引いてもかっこよさが勝る




「そっかー、アイドルかぁ
きっと環だったらなれるよ テレビにたーっくさん出て、有名なアイドルになれる
理ちゃんだって、きっと見つかる」




隣にいるのに、なんだか環が遠く感じる いつも当たり前にそこにいた人間がある日突然、手の届かないところに
行ってしまうような、そんな感じ


まだ環はここにいるのに、私には環が人気アイドルになってたくさんの人に囲まれて私なんかが気安く話しかけていい人じゃなくなる未来が見えた気がした




「有名人になっちゃったら きっとこうして、2人でいることもできなくなっちゃうね」

「は?何言ってんの?別に変わんなくね?
俺がアイドルになっても放課後にれんれんとしゃべりながらプリン食べるに決まってんじゃん」




思いもよらなかった環の言葉に
どう返事していいのかわからなくなる




「ったく、しょーがねぇなぁ
勉強のしすぎで頭疲れてんじゃね?
俺のプリン一口あげっから、ほら口開けて」




透明なプラスチックのスプーンに一口分のプリンを乗せ環が私に差し出す
環が王様プリンを他の人にあげるなんて…槍でも降るんじゃないだろうか、と思いながら彼の好意を受け取る いつも環が美味しそうに食べている王様プリンの甘さが口の中に広がり、ツルンとした固形物が喉を通っていく


幼馴染の大きな決断を背中押さないわけにはいかないし、それになによりも応援したいという気持ちが大きかった




「私、環のファン第一号になる!環のこと誰よりも応援する!
環なら絶対に日本一のアイドルになれるよっ!そして絶対に理ちゃんにも会える!」

「おー!」




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