春日山城
□壊したがりと壊されたがり
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「愛してる、狂おしいほどに貴方を愛してる」
「お前が愛しい、愛しくておかしくなりそうだ
どこにもいくな…俺だけのものでいろ」
「私は貴方のもの
貴方の好きなように、私を愛でて
愛されて愛されて、愛され尽くして壊されてもいい」
「この手におさめたというのに、足りぬ
どんなにお前に触れても、閉じ込めても
俺だけの檻に捕らえていても、足りぬ…
どれほどお前を愛しているのか、どうすれば伝わる…」
「貴方の愛、伝わっているわ
熱くて、激しくて、歪んでいる
貴方は大切な物の愛し方を知らない可哀想な人
大切な物ほど、大切にできない不器用な人
私はそれでも構わない、それが貴方の愛の形なら」
「その美しい顔を、愛おしい仕草を、可憐な声を
全て俺だけのものにしないと気がすまない
お前の目は俺を見るためだけにある
お前の体は俺に触れられるためだけにある
お前の声は俺の名を呼ぶためだけにある
その口で紡いでいいのは俺への愛だけだ…」
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私の愛しい人、上杉謙信は人の愛し方を知らない
その冷たい瞳の奥に燃えるような熱情を持っているのに
貴方はその熱の使い方を知らない
「紅……、愛している」
「私も、愛してる
謙信だけを愛してる、私は謙信だけのものだから」
左右で色の違う瞳には歪んだ愛が滲む
愛しい物ほど、貴方は壊してしまう
私は貴方になら壊されても構わない
「謙信…っ、いいよ……、私のこと壊していいよ?
貴方の愛で、私の全部を奪って…っ」
愛する者から与えられる死は、究極の愛だと思う
異論を唱える人は多いとは思うが私の自論はそうだ
愛で者の手によって己の最期を迎えられるなら
こんなに幸せなことはないと思う
だから私は、謙信の歪んだ愛によってもたらされるであろう己の死を不幸だとは思わない
むしろ私はその最期を望んでいる
この世の中で一番愛している謙信から贈られる最後にして最大の愛の贈り物、それが死だ
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