春日山城

□歪
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あれから、一体何度朝を迎えた?
窓の外が明るくなり、そして暗くなる
朝、昼、夜が動く絵のように
窓の外で勝手に進んでいく




「紅」

「謙信…様」




私を支配する美しい人
温度のない瞳は左右で色が違う
あまりに美しくて何度みても
見惚れてしまう

なんて罪な人
こんなに美しい人になら
何されたって構わない

たとえこの身を汚されようと
自由を奪われようと
貴方に逆らおうなんて思わない
思わせない、それが貴方の力…






「退屈だっただろう?
側に寄れ、相手してやる」







艶のある声に呼ばれ
謙信様に近づき陶器のような肌に触れる
その頬に手を添えれば
色素の薄い髪から覗く瞳に自分が映る

貴方より美しいところなんて
何一つない私を、貴方はどうして
愛してくれるのかわからない







「謙信様、お慕いしております」

「あぁ、俺も愛している」








表情を変えることなく私に愛を囁く謙信様
それでも確かに貴方の愛を感じる
痛いくらいに、苦しいくらいに
貴方の愛を、感じる







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