安土城

□わがまま
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わがままな悩みなのはわかってる
私は十分すぎるくらい幸せで恵まれている
それでも、、やっぱり求めてしまう




「はぁ…」




庭を眺めながら今日何度目かのため息をついてしまう




「どーした紅?浮かない顔だな」

「政宗…」

「秀吉と何かあったか?」

「え?!」

「なんだ?図星か?」




政宗は私の隣に腰を下ろし目線を合わせてくる
切れ長の瞳に、私の心の中のモヤモヤが全て見透かされてしまいそうだ




「ったく、秀吉のやつ何やってんだ??
紅にこんな顔させるなんてな
今から俺にしとくか?そんな顔させないって約束するぜ?」

「ううん、違うの政宗
秀吉さんは、悪くないよ…
私がわがままなだけだから」




そう、秀吉さんは悪くない
私には勿体無いくらいに素敵な人で
あの人の恋人でいられることが夢のように嬉しい




「なんだそれ?女はわがままなくらいでいいだろ
特にお前みたいにいい女のわがままなら大歓迎だぜ」

「もう、すぐそうやって口説こうとする」

「仕方ねぇだろ?目の前にいい女がいたら口説きたくなるのが男ってもんだ」

「ふふ、相変わらず上手だね政宗は」

「結構 本気なんだけどな
で、なんでそんな悩んだ顔してんだ?
俺でよかったら話くらいは聞くぜ?」




政宗は人の気持ちを察するのが上手だから私が話しやすいように空気を和ませてくれる
そんな気遣い上手な政宗に何度救われたことか…




「あのね、本当に贅沢な悩みなんだけど…」




政宗の優しさに甘えて、ここ最近誰にも言えずに悩んでいたことを打ち明ける




「秀吉さんの恋人になれて、気持ちが通じてすごく嬉しい
すごく私のこと大切にしてくれるし、今まで以上に甘やかしてくれるし、信じられないくらい幸せなの…」

「なんだ?ただの惚気か?」

「そうかもしれない…、本当に幸せなんだけど…ね」

「けど?」

「なんて言うか……その…大切にされすぎっていうか…」




言葉にしようとしてることが、どんなに恥ずかしいことか今更こみあげてきて上手く言葉にできない




「なるほど?要するに秀吉のやつ、お前のこと大事にしすぎて手ぇ出してこないってことだな?」

「……うん」




言葉にするとすごく恥ずかしい
こんなの私が秀吉さんとすごくシたいみたいじゃない




「別に、そういうことするだけが恋人じゃないのはわかってるのっ……、でもやっぱり好きな人からは求めて欲しいと言うか…その…
本当に私のわがままなのはわかってるんだけどっ…」

「いや、そういうのは我儘って言わねぇよ
ったく秀吉のやつ何やってんだか
俺だったら毎晩でも可愛がってやる、愛しいやつには体全てで愛しいって伝えてやるのにな」

「さすがに毎晩は……、たまにならね
秀吉さん、いつもお仕事忙しそうだし」

「しかし、あの秀吉が手出さねぇなんてな
そうとう紅に入れ込んでるみてーだな」

「え?そうなの?」

「あいつらしいって言えば、らしいな
本当に大切なやつだから、あえて手を出さないというか出せないというか…そういう奴なんだあいつは」

「うん…」




わかってる、秀吉さんがどんなに私のこと大切にしてくれているか
わかっているからこそ、こんなことで悩む自分が嫌なんだ
体の関係だけが恋人じゃない、それでも私は秀吉さんと肌を重ねて愛し合いたいよ……




「とにかく、秀吉はお前のこと愛してんだ
試しにお前から誘ってみればいいんじゃないか??
そうすれば面白いことになると思うぞ
あ、自分から誘うのが難しいなら俺が練習台になってやってもいいぜ」




政宗はくしゃりと私の頭を撫でて立ち上がり言った
そんなふうに最後は笑いに変えてくれるのが政宗の優しさだ




「ありがとう、政宗
そうだよね…待ってるだけじゃなく自分から動かないとね」

「おう、がんばれよ」




溜まってるならいつでも相手してやるからな、と最後に無駄な一言を付け加えて政宗は去っていった


私、考えてみたら欲求不満みたいじゃない!!
今になって政宗に相談したことが恥ずかしくなってきた


そう考えながら火照る顔を隠し自室に戻った




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