安土城

□わがまま
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夜になり、私は意を決して秀吉さんの部屋に向かった




「失礼します」

「紅か、どうした??」

「えっと…その…、秀吉さんに会いたくて…
お仕事の邪魔だったらごめん」

「邪魔なわけあるか、せっかく来てくれたんだからゆっくりしてけよ
茶でも淹れるから、そこ座って待ってろ」

「…あの、秀吉さんっ」

「ん?」




政宗に言われたように、自分から誘ってみることにしたはいいが、どういうふうに誘えばいいのかわからない




「どうした?」




もじもじする私を不思議そうに覗き込む秀吉さん
私はきゅっと秀吉さんの着物の裾を掴み目をあわせた




「その……えっと…一緒に寝てもいい?!」

「え」

「いやっ、あのっ、違うのっ
もしお仕事終わってるなら、でよくて…
深い意味とか無くて…ただっ、一緒に寝たいなー、なんて…思ったり……」




自分でも何を言ってるのか、いたたまれなくなり俯く
だめだ、恥ずかしすぎる
上手く言葉にできないし、っていうか私支離滅裂すぎる
秀吉さんの顔を見ることができない
絶対顔真っ赤…こんな顔でこんな距離で秀吉さんと目をあわせたら死んじゃう




「悪い、紅…」

「ううん!いいの!お仕事忙しいのに変なこと言ってごめんなさいっ……、それじゃ私は、これで」

「違う、そうじゃない」

「え?」




離れようとする私を秀吉さんはぎゅっと腕に閉じ込めた
厚い胸板に抱き締められ、秀吉さんの心臓の音がきこえる
規則正しい鼓動がいつもより少し早いような気がして、私の鼓動まで加速する




「昼間、お前と政宗が話してるの聞いちまってな」

「!?」

「すまない、お前を不安にさせて
本当は毎晩でもお前をこの腕に抱いて、たくさん愛してやりたいって思ってる
でも…、最初はお前のこと妹だとか言っておいていきなりがっつくのは何ていうか…大人気ないというか…、全部俺のかっこつけだ
お前に情けないとこ見せたくなくて、虚勢張ってたんだ…」




秀吉さんがそんなふうに思ってたなんて知らなかった
でも、また1つ秀吉さんの新しい面を知れた気がした




「俺はお前のこと好きすぎて、愛おしすぎて、可愛すぎて、自分を抑えられなくなるかもしれない
優しくしてやる余裕なんて無いかもしれない、お前のこと愛しすぎて壊してしまいそうで…
そう考えたらお前に手を出すことができなかった…
本当、お前にはかっこ悪いとこばっか見せちまってるな」

「秀吉さん、かっこよすぎだよ…
そんなふうに考えてくれてたなんて…ありがとう…
でも、秀吉さんかっこよすぎるから、私にだけはかっこ悪いところ見せてほしい…」




秀吉さんの体に腕を回しそう告げる




「…ったく、どんだけ俺を惚れさせたら気がすむんだ?お前は」




余裕のない声でそう言う秀吉さん
顔をあげれば待ちわびたように口づけをする
触れるだけじゃ飽き足らず、深く濃厚に絡めると
自分とは思えないくらい甘い吐息がもれる




「秀吉…さんっ…」

「紅、愛してる…どれだけ言葉で伝えても足りない…俺の全てをかけて…お前に伝えたい……愛してるよ」




私も愛してる、どんなに伝えても足りないくらい私は秀吉さんが好きで好きで堪らない
言葉にならない秀吉さんへの想いが甘い叫声になって部屋に響いた




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