安土城

□お子様は寝る時間
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昼過ぎになり家康は息急き切って安土城内を駆け回っていた




「ん?家康、そんなに慌ててどうした?」

「光秀さん、ちょっと色々あって…
あ、どうでした?春日山城に伝令遣わせたんですよね?」

「あぁ、明日中にはこちらに来るそうだ
まさか敵将を招くことになるとはあの娘のしてくれることは恐ろしいな
ん?そういえばその紅はどうした?」

「そうだった、今かくれんぼ中なんです
紅見ませんでしたか?」

「さぁ、知らないな」

「ったく、どこに隠れたんだよ…
それじゃそーゆーことなんで失礼します
あ、光秀さん紅に加勢とかしないでくださいね
あんたが絡んだら勝てる気しないんで」

「あぁ、わかった」




光秀は薄い笑みを浮かべ家康を見送り安土城内であてがわれている部屋に入った




「家康ならもういったぞ」




誰もいない空間にそう言うと襖が静かに開き紅が出てきた




「ありがとう!!
ふふ、いえやす どんなかおしてた?」

「なかなかお前が見つからないもので
そうとう慌てていたぞ」

「やったー」

「とんだ悪戯っ子だな
俺に順番が回って来る前に元に戻れよ」

「ん?なぁに?」

「いや、何でもない
ほら そろそろ行け ずっと同じところにいるのは卑怯だぞ」

「あーい、ありがとう みつひで!」




紅はひらひらと手を振りながら無邪気な顔でそう言い
家康が近くにいないか注意深く部屋の外を見て出ていった




「全く…、恐ろしい娘だ…」




いつも光秀さん、と呼ぶ紅が
子どもとはいえ自分を呼び捨てで呼ぶのがこんなに胸にくるものかと光秀は自分を嘲笑った




__________




「紅?見てないぜ」

「かくれんぼか?
俺は見てないぜ、あいつかくれんぼ上手いんだな」

「紅様なら先ほどお庭の方に向かわれましたよ」




かくれんぼというか、ほとんど紅の捜索になっていた家康に有益な情報をもたらしたのは三成だった
家康はそれを若干不服に感じながらも庭に向かった




「はぁ…ったく」

「家康ー、見つかったか?」




秀吉、三成、政宗も庭先にやってきた
家康が視線をやっている方に視線をやると照月、ウリ、ワサビそして信長の羽黒に囲まれて寝ている紅がいた




「とんだじゃじゃ馬だな」

「ってか、こいつらなんで城にいるんだ?」

「さぁ…」

「可愛い寝顔ですね」

「確かに可愛いが、こんなとこに寝せといたら風邪ひくだろ
こいつの部屋にでも運んでやらないと」

「俺が行く、ついでに添い寝でもしといてやるよ」

「俺が行きます、当番は俺ですから
それに政宗さんに任せといたらどうなるか…」

「なんだよ、どうもしねぇよ」

「朝、紅に口づけさせようとしてたじゃないですか」

「政宗、お前…」

「あれは冗談だって言ったろ?
秀吉も、本気にすんなよ」




武将たちがごちゃごちゃとしている間も紅は動物達に囲まれて幸せそうに寝ていた




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